エンディング.魔法科へ






 魔法科2年1組の教室は、何時にも増してがやがやとしていた。
朝のホームルームが始まるまであと5分。
その時が近づくにつれてざわめきは強まっていく。

「…いよいよね」

 周りの気持ちを代弁するがごとく、杏璃はそう呟いた。

「…雄真殿の人となりで、心配するような事などあるまい。
 俺たちは必要な時、雄真殿の力添えになれればよいのだ」

「そうですね。小日向さんなら、すぐにこのクラスにも溶け込めるでしょう」

 信哉の言葉に、沙耶は相槌を打つ。
しかし、言葉ではそう言いながらも、沙耶のそわそわは止まってくれなかった。

 そして、もう一人。
春姫に限っては一言も口をきかず、じっと椅子に座っていた。
彼女の席の隣は、もう空席になっている。
雄真の転科を踏まえ、もう一度名前順で席替えを行ったのだ。

 何の因果か、春姫、杏璃、信哉、沙耶が普通科で授業を受けていた時と、
全く同じ席の位置になっていた。

(…もうすぐ会える。また一緒に授業が受けられる)

 そう春姫が思った直後、教室の扉が開かれた。

「はい、着席着席!! 今座ってない人は遅刻扱いだよ〜!!」

 そういって、担任の九条陽菜が入ってきた。
教卓の前に立つとニヤッと不敵に笑う。

「喜べ!! 今日はお前たちに新たな仲間を紹介するぞ!!!」

きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!

 クラスメイトたちが色めきだす。
魔法科は男子と女子の比率が2:8である為、
男どもの図太い声は女の子の黄色い声で掻き消された。

「そしてなんと、その仲間は男である!!!」

きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!

 黄色い声が目立つが、男たちも嬉しくないわけじゃない。
40人中わずか8人しかいなかった仲間が、1人増えるのだ。
喜びの趣旨は違えど、歓迎っぷりはイコールだった。

「さらに言うなら!! このクラスのほとんどの奴よりも、すでに強い!!!」

 ぴたっと声援が止まった。急に教室が静まり返る。
転科してくるぐらいだ。ある程度はやると思っていたものの、
担任・九条陽菜がここまで断言するのは珍しい。
廊下から「ちょっと?!」と叫ぶ転科生の声が、教室に嫌に響いた。

「さあ、入っといで!!! 自己紹介じゃー!!!」






 この上ない程入りづらい空気を作り出した張本人が、入室を命令してくる。
いきなり前途多難だ、と雄真は感じながら目の前の扉を開けた。
教室の作りは全く同じ。黒板の位置も、教卓も窓も机も。見慣れていた風景と変わらない。
少しだけ、全てのサイズが大きいような気もしたが、気になる程のことでもない。
ただ。一つだけ大きく違うのは、生徒が皆ワンドを机に置いていること。

 興味津々の視線を感じながら、雄真は陽菜のいる教室の前・黒板のど真ん中へ向かう。

「さあ、ほら!!!」

 促されて前を向く。
新しいクラスメイトの顔の全てが、こちらを向いていた。
その中で、見知った顔を見つける。
春姫、杏璃、信哉に沙耶。

急に緊張が解れた。




「魔法科に転科してきました、小日向雄真です!!
 これからよろしくお願いします!!!」






Happiness story『小日向雄真の魔法科転科奮闘記』・ 完 


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