以下に記すのが、本大会4日目のスケジュールである。
≪ターゲットアタック 3回戦≫
備考:勝利した者が1・2位決定戦、敗北した者が3・4位決定戦へ。
Aブロック
桜井誠(京帝) 対 汐留渚(名古屋)
Bブロック
高峰小雪(瑞穂坂) 対 毛利哲也(静岡)
≪バルーンクラッシュ 3回戦≫
備考:勝利した者が1・2位決定戦、敗北した者が3・4位決定戦へ。
Aブロック
藍本静香・東山幸平・吉田小百合(瑞穂坂) 対 目黒竜也・藤原友則・大金利通(東京)
Bブロック
神坂春姫・小日向雄真・柊杏璃(瑞穂坂) 対 三井良平・桜井誠・向井正春(京帝)
≪ダブルス 3回戦≫
備考:勝利した者が1・2位決定戦、敗北した者が3・4位決定戦へ。
Aブロック
上条信哉・上条沙耶(瑞穂坂) 対 星城聡・向井正春(京帝)
Bブロック
日立ニオ・菅野宮重次(静岡) 対 神威信・児玉白(京帝)
≪シングルス 2回戦≫
備考:勝利した者が1・2位決定戦、敗北した者が3・4位決定戦へ。
Aブロック
第1試合
乃木鉄平(仙台) 対 蔵屋敷美紀(舞浜)
Bブロック
第3試合
式守伊吹(瑞穂坂) 対 神威空(京帝)
大会4日目は、大会3日目の序盤からの熱戦とは裏腹に。
―――――――恐ろしいほど静かに。しかし水面下では、実に慌ただしくスタートした。
Happiness story「小日向雄真と七校対抗魔法大会」
Magic25.条件
大会4日目。
各競技それぞれがトーナメントにより、半数以上が脱落した今。
会場A・Bは閉鎖され、全てC会場によって執り行われる運びとなった。
本日最初の種目であるターゲットアタックも例外ではなく。
第1試合にAブロック3回戦。第2試合にBブロック3回戦となっている。
その、流れるような所作に。誰もが目を奪われる。
日に照らされた水は、きらきらと輝きを放ちながら渚の周囲を取り囲んだ。
「これで、終わりです」
「く、くそっ!!」
京帝・桜井が障壁を発現すべく構える。
が。
シュドドドドドドドドドドドドッ!!!!
「“水飛沫”」
まるでショットガン。
渚の周囲で滞空していた水は、渚が振り下ろした錫杖の動きに呼応し。
対戦相手・桜井のポイント板を目にも留まらぬ速さで強襲した。
その、数えきれない程の水の弾丸は瞬く間に渚の点数を上昇させ。
ビ――――――――――ッ!!
『試合終了です。
名古屋魔法高校のスコアが、コールド10000点に達しました。
Aブロック第3回戦は、名古屋魔法高校3年・汐留渚の勝利とします』
――――――瞬く間に勝敗を確定させた。
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
「お見事です」
「?」
勝敗を決し、フィールドから退場すべく通路を歩いていたところ。
急に声を掛けられたことで、渚は歩く足を止めた。
明るいところで戦っていたせいで、薄暗い通路にまだ目が慣れない。
が。なんとなく、相手が誰であるかは渚も分かっていた。
「…高峰……小雪さん」
「はい、そうです」
渚の声に、小雪はにこやかにそう答える。
「…今年の決勝も、貴方と当たることになりそうですね」
「あらあら。予知は私の一族の専門分野なのですが?」
おどける様にそう告げる小雪に、渚がほほ笑んだ。
「予知を……するまでもないでしょう。それとも。この試合、負けるおつもりで?」
「まさか」
「ふふ、では。お待ちしておりますわ」
しゃらん
錫杖を揺らしながら、小雪の傍を渚が通り過ぎる。
それを見送ろうと小雪が振り返ったところで。
「小雪さん!!」
「? 藍本会長……」
渚とすれ違いで、静香が駆け寄ってくる。
普段の落ち着いた雰囲気からは想像できないほど、肩で息をしている。
おそらく、ここまで全力で走ってきたのだろう。
「はぁ……はぁ…」
「そんなに息を切らせて…。どうなされたのです?」
小雪の元まで辿り着き、静香は膝に手を当てて俯く。
が、直ぐに顔を上げた。
「はぁ……はぁ…小日向君が、目を…覚ました」
「…………………え?」
一瞬、何を言われたのか。分からなかった。
目を、覚ました?
そんなはずは――――。
「――ねさん、高峰さんっ!!」
「――っ。は、はい」
静香に呼ばれる声によって、現実に引き戻される。
「そ、そんな…。でも、どうしてですか? だって雄真さんは…」
「分からない。今は御薙先生・九条先生の立会いの下、医者に診てもらってるわ。
正直、次のバルーンクラッシュに参戦できるかは分からない。
まだ、診察にも時間が掛かる。それでも………。瑞穂坂の面々は“それ”に賭けることにした」
「!」
小雪は、静香の言いたいことを正確に把握した。
「だから、無茶なのは承知の上で。高峰さんにお願いがあるの」
「分かってます」
静香が皆まで言うよりも先に。小雪が力強く頷いた。
「この私の試合で、時間を稼ぎましょう」
「…お願い」
それだけ告げると、静香は直ぐに踵を返して走っていく。
どうやら向こうでは相当大騒ぎになっているようだった。
「ふぅ――――――」
1人取り残された小雪は、気持ちを落ち着かせるために深く息を吐き出す。
『姐さん、大丈夫でっか?』
タマちゃんが小雪の周囲をふわふわ漂いながら話しかける。
「………ええ。大丈夫ですよ」
それに笑みで返しながら、小雪は真っ直ぐ前を見据えた。
「雄真さんが、頑張れるなら……。私も頑張るだけです」
『選手入場です』
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
会場の歓声と共に、小雪はゆっくりとフィールドへと足を向けた。
ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ
規則的な音が室内に響く。
「―――心拍数も、異常は見られません。至って健康体です」
雄真の体に取り付けられていた仰々しい機材を外しながら、医師が告げた。
その発言に、周囲の空気が弛緩する。
「雄真くん、体調はどうかしら?」
「ん………。少し頭がぼぅっとするけど…。その程度かな」
鈴莉の問いに、雄真が普段よりもゆっくりとしたペースで答える。
負傷していた体は、既に治癒魔法で傷1つ残っていない。
故に心配すべきは内面の部分であったが、どうやらそちらも問題ないようだった。
「…正直、大会にはもう出るべきではないんだが…」
それを聞いていた医師が頭を掻きながらそうぼやく。
が、直ぐに片付けをしていた助手からファイルを受け取り立ち上がった。
「今大会に限っては、そうはいかないんだろうからね。
ドクターストップは掛けんよ。外見的な故障は見られないしな。
但し………これも多分言っても無駄だろうが。
無理はしないこと。君の体には、君が考えている以上に負荷が掛かってる。
それを忘れないように」
「ありがとうございました」
それだけ告げ、医師とその助手たちが機材を引きながら部屋を退出する。
その後ろ姿に、鈴莉は礼を述べながら丁寧に頭を下げた。
「それで? ちゃんと記憶はあるみたいだけど平気なわけ?」
ドアが閉まるなり、杏璃が雄真の顔色を伺いながら問う。
「…ああ。ずっと寝てたせいで体は固まってるが、問題ない」
「でも……今まで寝込んでいた選手をフィールドに駆り立てるというのもねぇ」
幸平が顎を撫でながらそう呟く。
「確かに、間髪入れずに…という感は否めないわね」
小百合も、それに同調するかのように雄真を見やる。
「しかし、ここで欠場してしまえば。
バルーンクラッシュの片方を放棄することと同義」
パンパンッ
伊吹の言葉で、皆が思考モードに切り替わったところで。
陽菜が手を数度叩き現実へと引き戻した。
「言い争いは平行線を辿るだけ。
結論を出そう。もちろん、決定権があるのは雄真君だよ」
その発言に皆が頷き、雄真へと視線を向ける。
「もちろん、でます」
即答だった。
その回答に、皆がほっとすべきかせざるべきか。微妙な表情を作る。
それを聞いた鈴莉が、皆の1歩前に出て、雄真にある物を差し出した。
「…そう言うだろうとは、思ってたわ」
「クリス!!」
「雄真さんっ」
雄真の思考が、相棒の登場により一気にクリアになる。
感動の再会を果たしている2人(?)を見ながら、鈴莉はため息を付いた。
「で、でもどうして…。魔力が尽きていた俺からは、補給できなかったんだろ?」
「鈴莉さんが、代わりに魔力補給をして下さっていたのです」
「雄真君と鈴莉さんは、親子で魔力が同じ波長・色をしてるからね。
それについてはかなり助かったんじゃないかな。今からワンドに魔力補給しても間に合わないし」
「あ、ありがとう!! 母さん!!」
「はぁ―――」
陽菜の説明を聞き、母・鈴莉に向かって頭を下げる雄真に。
当の本人は2回目のため息で応えた。
「? どうしたの?」
「………貴方が決めたことなら、止めはしないわ。但し、条件がある」
「…条件?」
鈴莉の発言に、雄真が訝しげに問う。
「ええ。これが守れないようなら棄権。試合中でも退場させるわ」
「!?」
鈴莉の発言に、一同が口を瞑る。
「………条件は?」
雄真が恐る恐る尋ねる。
「その1、ClassA以上の魔法使用禁止。
その2、クリスが行う“独自詠唱”含む一切の単独魔法使用の禁止。
そして、その3…………」
鈴莉は一度、雄真に意味ありげな目線を向けてから、その言葉を口にした。
「試合時間は15分間。それを越えることも禁止」
「なっ!?」
「はっ!?」
この声は雄真ではない。その横に控えていた、同じバルーンクラッシュのチームメイト。
春姫と杏璃から発せられた。
「じゅ、15分は流石に……」
「御薙先生っ!! それは流石にないでしょ、相手は王者・京帝ですよっ!?」
「だから言ってるのよ」
春姫と杏璃の反論を、鈴莉は涼しげな顔で一蹴した。
「相応の負荷が掛かる。雄真君、貴方の体は見えないところで悲鳴を上げてる。
貴方がもし、“バルーンクラッシュで優勝”する気でいるのなら――――」
鈴莉の鋭い視線が、雄真を射抜いた。
「この試合は、只の通過点だと思いなさい」
「!?」
王者・京帝高校の、ベストメンバー。
そのバルーンクラッシュ選手との試合を、“通過点”呼ばわり。
冗談で言っている顔ではない。
だからこそ、余計に性質の悪い冗談に聞こえた。
「……御薙先生、それは流石に」
「東山先輩」
幸平が異議を唱えようとしたところで、雄真がそれを制する。
幸平の目が自分に向いた事を確認して、雄真は告げた。
「先に行って待ってて下さい。決勝で、会いましょう」
「っ」
その言葉に、鈴莉以外の全ての人間が息を呑む。
雄真が、無茶な条件を受け入れた。そして、それだけではない。
“決勝で、会いましょう”
その意味するところは、只1つ。
――――これから行われる“対・目黒竜也戦”。それに勝て、と言っているのだ。
「いいわ。面白い展開になってるじゃない」
雄真の挑戦状を受け取ったのは。
たった今。この治療室に入室してきた女子生徒。
藍本静香。
「神威信を倒せなくて残念ね。貴方の七賢人戦は、あれで終わりよ。
なぜなら。バルーンクラッシュ参戦の目黒竜也は、私たちが倒すからね」
そう言いながら、静香はチームメイトである幸平と小百合の肩をポンポンと叩いた。
「し、静香…」
「藍本会長…」
その大胆な発言に目を白黒させる2人に、静香は笑顔で応える。
それを見て、幸平も小百合も。もう、逃げられないと悟った。
「…しょうがないな」
頭を掻きながら、幸平がそうぼやく。それに同調するかのように、小百合も苦笑した。
ビ――――――――――ッ!!
『タイムアップ。試合終了です。
よって、現時点でのスコアにより勝敗を決します。スコアは0対5260。
Bブロック第1回戦第1試合は、瑞穂坂学園3年・高峰小雪の勝利とします』
垂れ流されていたモニターから、試合結果が報じられる。
小雪の勝利。そして、これは1つの結果を導き出した。
今大会・ターゲットアタック決勝戦のカードは、汐留渚 対 高峰小雪。
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
会場を揺るがんさんばかりの歓声は、少し離れた医務室にも届き、響き渡っていた。
「伊達に瑞穂坂の主将を名乗ってはいないわね」
静香がよくやったとばかりに頷く。
「ふん。相手はどこの馬の骨とも知れん輩であろう。
むざむざ敗退するようなタマではないわ」
伊吹も口ではこう言うものの、幾分かほっとしたような表情をしていた。
医務室に集合していた瑞穂坂選手が、それぞれの賞賛の言葉を述べたところで。
「さて」
幸平が、座っていた椅子からゆっくりと腰を上げた。
「いこうか? 出番だ」
「ええ」
「はい」
それに、静香と小百合が頷く。
「頑張って下さい」
背を向けて歩き出した3人に、雄真がそう声をかける。
それに静香はひらひらと手を振って応え、幸平は苦笑いで返した。
そして、小百合は。
「小日向君。昨日の試合、見事だったわ。
多分、君はもっと強くなれる。技をちゃんと“使いこなせればね”」
振り返らず、そう切り出す。一呼吸おいて、そのままの状態で再び口を開いた。
「フル・アーマーを使った実“戦”を、見せてあげる」
励みになります。
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Leica
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