『七校対抗魔法大会出場選手決定のお知らせ』

2011/09/22 九条陽菜

 今年も例年通り、七対抗魔法大会が開催される運びとなりました。
我が瑞穂坂学園もこれに出場します。

それに伴い、瑞穂坂学園・大会出場者を決定致しました。
この決定に質問・異論のある方は9/24までに、魔法科教師に連絡ください。

下記にメンバーを記します。

大将
3年 高峰小雪


3年 藍本静香

3年 東山幸平

2年 神坂春姫

2年 上条信哉

2年 上条沙耶

2年 小日向雄真

2年 柊杏璃

2年 吉田小百合

1年 式守伊吹


顧問
九条陽菜

以上。






Happiness story『小日向雄真と七校対抗魔法大会』

Magic2.瑞穂坂最強メンバー決定!!






 理事長室での七校対抗魔法大会参加承諾を行った翌日。
朝のホームルームで早速その文書は配られた。
「この決定に質問・異論のある方は〜」と書かれているものの、
この学園が選出したメンバーが変更となったことは、これまでに一度としてない。

 学園側も、この大会には全力で取り組む。
全国に存在する学校の中でも、魔法を扱う学校はわずか7校しかない。
その7校が、各々の教育成果を発揮する場ともいえるこの大会。
世間一般の人々に、自分の学校こそが素晴らしいとアピールできるいい機会となる。

 優勝校には大いなる栄誉を。
この大会の結果は、そのまま入試の偏差値の変動にも直結する。

 また、大会当日には名立たる企業の重役や、名家の御曹司なども見学にくることが多い。
いわば、人材の発掘現場ともなるのだ。メディアの注目度も俄然高まる。

 そして。極めつけは七賢人たちのプライド。
7校はそれぞれが、七賢人の統治する場所に建てられている。
仮に七賢人の後継者が参加していなくとも、その土地にその学校がある以上。
どうしても世間も学校も七賢人たちも、その結果を意識せざるを得ない。

 こういったいくつもの複雑な事情を絡め取り、
七校対抗魔法大会は世間ではほぼ知らぬ者無しの大会となっていた。
学生だけでなく、それに関係する大人までもが本気も本気。
意地とプライドが大激突する場となっている。

 話を戻すが、だからこそ学園が選出したメンバーには、皆異を唱えない。
それが万全を期したメンバーであることを知っているからだ。

 しかも、今年はこの国が誇る名家・七賢人の次期当主たちが全員参戦する初の大会となる。
否が応でも、学園の士気は高まりつつあった。






「すっごいじゃない!! 何よこのメンバー!!
 2年は全員うちのクラスから出てるー!!」

 配布されるなり、真白美砂はそう叫んだ。

おおっ!!

 徐々にクラスにざわめきが広がる。
ホームルーム中ではあったが、誰も咎めるクラスメイトはいない。
むしろ、担任までもがニコニコ顔であった。

「その通り!! 私は鼻が高いよっ!!」

 陽菜は笑顔でそう言った。
2年生代表は全員が1組。しかも選ばれたのは6人。代表総数は10人。
学年全てを入れて計算しても、普通に半分以上を2年1組が占めていた。
(教員の間では、あまりのパワーバランスの格差に頭を抱える者が多かった)

「これで、私の教育方針が正しかったことが証明されたわけだ!!」

「………別に九条先生の教育とは関係ないんじゃ―――」

ビシィィィッ!!!!

「ぐはっ!?」

 陽菜の言葉にぼそっと呟いた生徒が、椅子から転がり落ちる。
的確に額を捉えていた陽菜のチョークにやられ、男子生徒は床で顔を抑えて蹲っていた。

「っという訳で、メンバーに選ばれた諸君は今日から練習開始だからね!!
 皆も応援よろしく!! じゃ、ホームルームはおしまいー!!
 号令っ!!!」

 こうして、朝のホームルームは終わりを告げた。






「へぇ!! 凄いじゃない!!
 じゃあ、雄真も春姫ちゃんもみ〜んな代表選手なんだ!!」

「まぁな」

 昼休み。
いつも通りOasisで昼食を食べていた雄真は、準とハチに経過報告をしていた。

「………ちくしょう」

「どした?」

「ちくしょう」

「は?」

「ちくしょう!!!!」

ガタンッ!!!

 ハチが勢いよく立ち上がる。

「なんでだ!!! なんでお前ばっかり!!!
 羨ましすぎるぞちくしょ――――っ!!!!!」

 吼えた。あまりにも残念なセリフを。

「おいおい」

 これには雄真も若干ヒいた。

「そんなとこで活躍でもしてみろ!! お前ますますモテモテじゃんか!!
 許さねぇ!! 俺はお前を許さねぇぞぉぉぉ!!!!」

「め、めんどくせー」

 ハチの訳も分からない怒りに、雄真は頭を抱えた。

「雄真!! 大体お前はなぁ―――」

つんつん

 雄真の肩がつつかれる。
振り向くと準が自分を指さしていた。その指をハチに向ける。
そして指で丸を作った。

こくっ

 その仕草にピンときた雄真は、即座に頷く。
雄真の了解を得た準は、ゆっくりと立ち上がった。

「聞いてんのか!? お前に話してるんだぞ俺は!!
 ともかくだなぁ――――」

「パトリオットミサイルキィ――――ック!!!!」

ドゴォッ!!!!!

「へぶほぉっ!!??」

 準の一撃はハチの懐にクリティカルヒットした。
まともに受け身の姿勢を取っていなかったハチは、そのまま吹っ飛んで行く。

ドッシャ――――ン!!!

 酷い音がする。
どうやら勢いを殺せず、そのまま壁に激突したらしい。

「ちょっとちょっと!! 困るわよ準ちゃん!!
 こんなところでゴミ増やさないでよねー!!」

 ウェイトレス姿の杏璃が、遠くから叫んだ。

「………ゴミって、杏璃ちゃん」

 そのやり取りを一言も口を挟まずに、食後のいちごパフェを食べていた春姫はそう呟いた。






「大会は10月1日から6日まで。土曜日から木曜日までだね。
 大会が終了して7日に解散だから、
 君たちには3日から7日までの間、学校は公欠扱いになるから。
 大会まであと1週間とちょっと!! 気を引き締めていこう!!!」

「「「「はい!!!!!」」」」

 放課後。
魔法実習ドームに召集されたメンバーは、陽菜の喝に元気よく返事した。

「よし!!
 んじゃ、練習に入る前に各々ウォーミングアップしてね!!」

 陽菜の声を聞き、一度バラバラに散らばる。
ストレッチでもしておくか、と考えたところで2人組が雄真の前に現れた。

「やあ、ちょっといいかな?」

「はい?」

 声を掛けてきたのは東山幸平と藍本静香。

「いや、昨日はメンバーの発表だけで、自己紹介もあまりできなかったからさ。
 僕は東山幸平。瑞穂坂学園生徒会魔法執行部の副会長だ」

「ど、どうも。小日向雄真、2年です」

 差し出された手に応じる。
生徒会なんてあったのか、という疑問は何とか心の奥底に捻じ込んだ。
まぁ、普通の学園ならあるに決まっている。

「私は藍本静香。同じく瑞穂坂学園生徒会魔法執行部。
 生徒会長よ」

「よ、よろしくお願いします」

 同じく差し出された手に応じる。
生徒会長と副会長。事実上、瑞穂坂学園の生徒・2トップだ。

「毎年、この催しには生徒会役員からも参入する。
 なにせ学校の魔法関連のトラブルを取り締まったりすることも多い組織だからね。
 それなりに腕の立つ者が揃うんだ。だから、今大会にも毎年多分に影響を与えてきた」

「“今までは”ね」

 幸平の言葉を、静香が引き継いだ。

「過去の出場人数最高は8人。
 10人中8人だから、8割が生徒会メンバーだった時もある。
 逆に過去最低は3人。会長・副会長・書記のトップ3しか入れなかった時。
 でも、今回その記録をさらに下回る事になったの」

「は、はぁ…」

「ふふ。御免なさい。そんなに固くならないでくれていいのよ?
 別に生徒会の面目が立たないから云々の話を押し付けに来ている訳じゃない。
 私はこの状況に期待しているの。瑞穂坂に良い風が向いているんじゃないかってね」

 静香はニコッと笑った。

「特に貴方。小日向雄真君。
 貴方の武勇伝の数々は聞いているわ。
 魔法科転科試験から始まり、魔法理論では学年トップクラスの知識を誇り、
 使える魔法式も豊富。そして、つい先日のClassA取得。
 これからよろしくね?」

「ど、どうも。こちらこそよろしくお願いします」

「お邪魔したわね。それじゃあ、また後で。
 行こう? 幸平」

「ああ。今日からよろしくね。小日向君」

「はい」

 そう答えると、2人は少し離れた所で魔法を発動していた。
どうやら魔法を利用したウォーミングアップをするつもりらしい。

「どうかしたの? 雄真」

 後ろを振り向くと、杏璃がこちらに歩いてくるところだった。

「いや、ちょっと挨拶を、だってさ」

「あぁー。藍本先輩に東山先輩ね。あの2人。会長と副会長よ」

「ん。本人から聞いたよ」

「ClassBは春姫の方が先に取得していたけど、
 魔法の実戦でいったら、春姫よりも普通に強いわ。
 場数をこなしてるっていった方がいいのかもしれないわね」

「そうなのか?」

 春姫を『学園の誇る才媛』と聞いていただけに、その事実には驚いた。

「ポテンシャルにおいては、ほぼ全てにおいて春姫が上よ。
 ただ、先輩たちは使い方が凄くうまいの。ん〜。何て言ったらいいのかなぁ?」

「私がClassBの魔法で戦っていても、
 藍本先輩や東山先輩なら、ClassCの魔法で応戦できてしまう。
 杏璃ちゃんが言っているのはそういった意味じゃないかな」

「それよ!!」

 後ろからフォローを入れに来た春姫に、杏璃は賛同した。

「なるほど。どんな魔法も、ようは使いどころってわけだ」

「そういうこと。その2人が今回の昇格試験でClassBを取った。
 もしかしたら、雄真よりも強いかもね」

 杏璃の思わせぶりな挑発に、雄真は肩を竦めた。

「何も俺は自分のことを最強だと思っちゃいないさ。
 単純にClassAの試験を合格するだけの発現スキルがあっただけ。
 イコールで魔法使いの強さにはならない」

「けど。強いのは確かだよ?
 ClassAの試験には、魔法模擬実戦もあったんだよね?」

「ああ。まぁ、どちらかと言えば、あの実戦で活躍したのは身体強化だったからなぁ」

「はい!! んじゃ集合!!!!」

 雄真が苦笑したところで、陽菜の声が響いた。






「そこまで!!」

 雄真は自分に纏っていた身体強化の魔法を解く。
あれから、今日は実戦形式の練習は行わないと陽菜は宣言。
名前を呼ばれた者から順番に陽菜の元へ行き、
指定された魔法を発現する、という手順が繰り返された。

「うんうん。良い感じの流れだね。
 足の移動力強化という面においては申し分ない。
 多少ではあるけど、魔力のおかげで防御も上がってるみたいだしね」

 そう言いながら、陽菜は自分の手元にある紙に何やらメモしている。

「九条先生。そういう事って、見るだけで分かっちゃうんですか?」

「んん?
 あぁ、これは目を強化してるからね。
 雄真君の足に対する風の身体強化と同じ分類。
 私は目に対して光の身体強化を掛けてるの。
 だから、魔力の色や流れ、密度とかもばっちり。
 ある程度は戦っていなくても把握できちゃうよ」

「へぇ。凄いですね」

「雄真君が光の属性変化を覚えられたら教えてあげるよ。
 じゃ、ご苦労様。下がってくれて構わないよ」

「ありがとうございました」

 安全対策用のフィールドから出て、皆が待つ場所へと合流する。

「これで全員の検査が終わったわね」

 同時に静香が声を発した。

「検査?」

「そう。九条先生にはいくつかの魔法を見ただけで、その属性や発現状態が分かる。
 果てはその人の戦い方の特徴や、長所・短所なども見抜けてしまう。
 あの目の強化は脅威だね」

 雄真の問いに幸平が返した。

「まったくだ。全身を隈なく調べられている感触は、
 あまりいい気分がするものではないな」

 伊吹がこれ見よがしにかぶりを振った。
そんな会話をしている間に、陽菜はフィールドを解いてこちらへ歩いて来ていた。

「皆ご苦労様。
 大体のデータは手に入れたから、後はこちらでオーダー案を検討してみるね。
 ちなみに、今なら自分の希望を言ってもいいよ?
 何か希望はあるかな?」

 皆無言。代表して静香が前へと進み出た。

「お任せします。九条先生のデータ収集能力については、経験上良く分かっています。
 九条先生と、大将・小雪さんで組んでくれて構いません」

「他の皆もそれでいい?」

 皆頷く。

「よし!!
 じゃあ、今日はここまでにしよう。
 明日までに仮オーダーを作ってくるから、
 明日からは各自その種目に合った練習プランを組みます。
 そこで問題があるようなら、その都度対応していこう。
 お疲れ!! 解散!!」

「「「「「お疲れ様でした!!」」」」」

 これで、練習1日目はお開きとなった。






「に・い・さ・ん〜?」

 夕食時。
食卓に着くなり、すももが怒気を纏った。

「な、なに?」

「聞きましたよ!!
 七校対抗魔法大会に出場するそうじゃないですか!!
 それも正規レギュラーメンバーで!!!!」

「あら? すももちゃんも聞いてなかったのね?」

 すももの声に、音羽が首を傾げた。

「えーと。まぁ…」

「何で黙ってたんですか!?
 昨日決まっていたのなら、お話ししてくれてもいいじゃないですか!!」

「いや、だって皆に知れ渡るのって今日からだし。
 それにまだ正式決定では――――」

「じ―――――――」

「じ――――――っ」

「ごめんなさい」

 謝った。

「は、話した後に取り消されたりすると恥ずかしくて…」

「そんなことないでしょ?
 雄真くんって今や魔法科でも知らぬ者無しの超魔法使いなんだから」

「ちょ、超?」

「そうですよ!! 兄さんが選ばれない訳がないじゃないですか!!!」

「ど、どうも」

「私、応援に行きますよ〜!!
 クラスのお友達も、是非見に行ってみたいって言ってました!!」

「そりゃ嬉しいんだけど、学園休まなきゃいけなくなるぞ?」

「平気ですよ!! 確か先生がなんとかにしてくれるって……」

「あぁ、社会見学ね」

「それです!! だから平気です!!」

「そっか。ありがとう。見に来てくれるのは嬉しいよ」

「えへへ。任せて下さい。兄さんの応援団結成してみせますから!!」

「いや、それは勘弁して。普通に恥ずかしいから」

「それじゃあ、私も行くしかないわね!!」

ガタンッ

 大きな音を立てて、音羽が立ち上がった。

「雄真くんとすももちゃんがいるところ、音羽あり!!
 私も雄真くん応援団の一員として―――」

「いや、かーさんは無理でしょ」

がが――ん

「な、なんで!?」

「そうですよ、兄さん!!
 お母さんの何がダメなんですか!!」

「年ね!? 私の年がネックになっているのね!?」

「だ―――っ!! 違う!!」

 雄真が叫んだ。

「大会は10月1日から6日までなの!!
 土曜日から木曜日まで!!
 すももは学生だから社会見学ってなるけど、
 かーさんはOasisのチーフだろ!!!」

びしぃぃぃぃっ

 と、雄真は音羽に指を突きつける。

「学園自体は休みじゃない。つまりOasisは平常営業。
 社会見学を理由に一週間休むなんて不可能。
 言ってる意味、分かるよね?」

「………す、すももちゃん」

「任せて下さい。ちゃんとお母さんの分まで応援してきますから!!」

 すももは一瞬で音羽を切り捨てた。

「うわ〜〜〜ん!!!」




 音羽のご機嫌取りの間に、食事が冷めてしまったのは言うまでもない。



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