≪ターゲットアタック≫
6日目 決勝戦
 高峰小雪(瑞穂坂)△ 対 △ 汐留渚(静岡)
配点内容:同点の為、両チームに得点なし。

≪バルーンクラッシュ≫
6日目 決勝戦
 神坂春姫・小日向雄真・柊杏璃(瑞穂坂)○ 対 × 目黒竜也・藤原友則・大金利通(東京)
配点内容:1位50点。2位30点。



○現在の学校順位
5位:仙台魔法学園(宮城)50P
6位:東京都立魔法学園(東京)60P
2位:瑞穂坂学園(神奈川)210P
3位:舞浜学園(千葉)70P
3位:静岡魔法学園(静岡)70P
6位:名古屋魔法高校(愛知)60P
1位:京帝高校(京都)220P






Happiness story『小日向雄真と七校対抗魔法大会』

Magic46.秒読み





ピッ ピッ ピッ ピッ

 規則的な電子音が響く中、医師がようやく顔をあげた。

「問題ないでしょう」

 カルテを看護師に手渡しながら続ける。

「特に異常はありません。外傷には傷薬を出しておきますから。それをちゃんと塗っておく事」

「はい。ありがとうございました」

「いんや、ははっ。それにしても」

「?」

「まさか今度は七賢人を倒して来るなんてねぇ。珍しいものを見させてもらったよ」

 医者は朗らかにそう笑うと、医務室から出て行った。

「ふぅ……」

 浅く息を吐く。雄真は、自分に与えられた車いすに体重を預けた。

『お疲れ様です、雄真さん』

「お前もな、クリス」

 膝の上の相棒に笑い掛ける。

『身体の調子はいかがですか?』

「少し気怠いってくらいかな。後は痛い」

『……でしょうね』

 クリスが苦笑するように同意した。

『眠気の方は?』

「気怠さでぼーっとなってるからな。多分寝ようと思えば寝れるんだろうけど」

『……そうですか』

 新橋恭介戦の時、雄真が眠っていた力を解放した時は3日間眠っていた。
神威信戦の時も、眠っていた力こそ解放はしなかったが寝込んだ。

《……いったい何なのでしょう。何か、規則性は》

「どうかしたのか? クリス」

『い、いえ。何でもありません。それよりも――』

「雄真ー!!!!」

「兄さん!!!!」

バンッ!!!!

 凄まじい音を立てて扉が開かれた。

「準と、……すももか」

「かーっこ良かったわよー、雄真!!」

「素敵でした!! 兄さん!!」

「あはは、ありがと」

 真っ直ぐな賞賛に、雄真は照れて頬を掻いた。

「って、雄真。大丈夫なの?」

 急に顔色を変えて心配され、雄真は思わず首を傾げる。

「何が?」

「何がって、車いすじゃない!!」

「ああ、そういうことか」

 雄真は車いすをパンパンと叩きながら平気であることをアピールした。

「問題ないよ。ちょっと魔力を使いすぎちゃってね。
 それで大事をとって借りてるだけだから」

「ならいいんだけど……」

 なおも心配そうな視線を送ってくる準に、雄真は手をひらひらさせることで応える。

「さーて、皆はどこ行ったかな。控え室か?」

「観客席ですよ」

 雄真の疑問に答えたのはすももだった。

「私のクラスメイトが帰りの電車が混む前に帰るっていうんで、
 その場所をそのまま瑞穂坂のチームさんに譲り渡したんです」

「へぇ、そうだったのか」

 確かに、そうでなければ今更空席を見つけることなどできないだろう。
C会場はとっくに満員御礼。立ち見の場所も無く、入場規制すらされているのだから。

「兄さんに格好良かった、感動したと伝えて下さいって言ってました」

「……何か照れるなぁ」

 そして、申し訳ない。
何せすもものクラスメイトたちは、雄真の試合を応援する為だけに来てくれていたのだ。

「ま、それだけの働きはしたってことよ。それじゃ行きましょうか」

 準が後ろへ回り、車いすを押してくれる。

「お、ありがとな」

「いえいえー。今日のMVPは雄真だからねー」

(……MVP、か)

 その言葉を、雄真は気怠さの残る頭の中で反芻させた。

(多分、今年のMVPも信なんだろうなー。去年もそうだったって言ってたし)






 そんな事を考えていたからか。
観客席へと向かう廊下で、あろうことか本人と遭遇してしまった。

「……雄真か」

「信」

 後ろに控える白が無言で頭を下げる。
それに倣ってすももと準もペコリとお辞儀をした。

「……まったく、大したことをしてくれたものだな。今頃会場の外は大騒ぎだぞ」

「……やっぱそうなのか」

「当たり前です」

 白が何を馬鹿な事をと切り捨てる。

「まさか本当に七賢人の一角を落としてしまうとは……。
 貴方の身の程知らずっぷりには感服致します」

「む……」

 白の物言いに準が顔をしかめた。
それに気が付いた信が、白を手で制する。

「白、それは言ってはいけないぞ。
 この大会は七賢人の為のレクリエーションではないのだ。
 誰が悪いと敢えて言うならば、負けたあいつが悪い」

「……おっしゃるとおりです。失礼致しました」

 信の所作から白も気付いた。
雄真の後ろにいる準とすももが、魔法使いではないことに。

 魔法そのものが浸透していても、
魔法使いの社会・力関係といったバックグラウンドにあるものについては、世間一般にはまだまだ浸透していない。
(雄真が転科した当初、御薙の息子であることが明かされても、普通科があまり取り乱さなかったのはこの為)

 だからこそ、七賢人の扱いをこの場で語るという事は不毛。
信と白は、直ぐにこの結論に至った。

「……点差は、10か」

「ああ」

 何の脈略も無い発言だったが、信が何を言いたいのか雄真は直ぐに理解した。

「悪いな。今年も優勝は京帝が頂く」

「……それはどうかな」

「何ですって?」

 雄真の返答に、白がピクリと眉を吊り上げた。

「これからダブルスの試合が行われます。
 瑞穂坂と京帝が戦う最後の試合です。
 それに出場する選手が誰か、当然貴方は知っておいでですよね?」

「もちろん」

 雄真は、自信たっぷりに頷いた。



「瑞穂坂から出るのは、上条信哉と上条沙耶だ。
 あの2人のペアが負けるところなんて、想像できないからな」






わああああああああああああああ

 会場は、相変わらずのボルテージだった。
雄真は車いすに乗っている為、人と人の隙間を縫って歩いていくことなどできない。

 皆のところになど辿り着けないのではないか、
そう思っていたのだがその予想は見事に裏切られた。

 皆、場所を譲っていくのだ。
雄真が通れるように、人ごみの中に一本の道ができてしまう。

「……」

「……うわぁ。見てみて雄真。どんどん道が開けていくわよ」

「兄さん、流石です」

 好奇な視線。

 七賢人の一角を落とした張本人を前に、観客は一様に無言のまま道を譲る。

「……」



『お前は取り返しのつかないことをした。気ぃ付けるんだなぁ。荒れるぜぇ? “この先”は』



 竜也の言葉が、頭を過る。
これが、この先も続いていくのだろうか。

「雄真!!」

「……あ」

 そんなことを考えていたら、横から名前を呼ばれた。
雄真がそちらへ振り向くと、伊吹が観客席の階段を駆けあがってきたところだった。

「よくここまで来れたものだな」

「え? ああ、いや……。皆、道を譲ってくれたから……さ」

「ふんっ、何を情けない顔をしておる」

「へ?」

「そなたは何も恥ずべき事はしておらん。堂々としておればよいのだ」

 伊吹の尊大な物言いに、雄真は目を丸くした。

「……伊吹」

「さ、立てるか。肩を貸そう。
 ここから先は階段だぞ。車いすで移動は無理だ。
 席は前の方にあるのでな」

「あ、ああ」

「ちょっと伊吹ちゃーん?

 その役目は雄真をここまでつれてきた私たちにあるんだから。
 ねー、すももちゃーん?」

「そうですそうです。伊吹ちゃんには我慢してもらいますよ!!」

 伊吹が雄真に近付くや否や、準とすももがブロックする。

「い、いや、私はそんなつもりでは……。む」

 顔を赤くし少し狼狽えた伊吹だったが、直ぐに表情を引き締めた。
視線は、ある一方向をロックしている。

 雄真はそちらに目をやり、何を見たのかを理解した。

「ならば、ここはそなたたちに任せるとしよう。私は少々席を外す」

「え、え?」

「ちょっと、伊吹ちゃん?」

「行かしてやってくれ」

 雄真が頭に盛大な?マークを浮かべる2人を宥める。

「ちょっと雄真、伊吹ちゃんがどこ行くか知ってるの?」

「伊吹ちゃん、怒っちゃったのでしょうか?」

「……いや、怒ってないから平気さ」

 すももの見当違いな発言に、雄真は苦笑した。

「ちょっと知り合いに会いに行っただけだよ」






「あー、雄真くんじゃない!!」

「あら、雄真君。よくここまで来れたわね」

「……それ、さっきも言われたよ」

「おーっす、おつかれー雄真!!」

 席で待っていたのは音羽と鈴莉、そしてハチ。

「あれ、他の皆は?」

「九条先生と高峰さんは、顧問と主将だからね。
 ギリギリまで信哉君と沙耶ちゃんについていてあげたいって。
 藍本さんと東山君、それに神坂さん柊さん吉田さんは車いすだから。
 ここまでは来れないってことで選手控室に向かったわ。そのまま観戦するんじゃないかしら」

「……つまり、皆ほとんど控え室ってことか」

 自分も控え室に篭っていた方が良かったのだろうか、と雄真は思った。

「それはどうかしらねぇ」

 そんな雄真の考えに気付いたのか、鈴莉がそんな事を言う。

「……? どういうこと?」

 雄真が問うのを見て、鈴莉は笑みを深めた。



「次の試合を良く見ていなさい。
 貴方にとって、これ以上勉強になる試合はそう無いはずだから」






「……」

 選手控室では。

 信哉と沙耶が直前に控える試合を前に、待機していた。

 誰1人として口を開かない。
信哉と沙耶の周りに集まった面々も、そのまま口を閉じたままだ。

 この2人に、このタイミングで何かを言う必要など無いことは、誰もが分かっていた。
式守家お抱えの従者。それも伊吹直属の、だ。
大一番の心構えなど、説く必要がない。

「……雄真殿は、勝ったのだな」

 沈黙に包まれる中、信哉が呟く。
隣に座っていた沙耶が、こくりと頷いた。

「……ふ。まさかこれほどまでに早く、伊吹様と肩を並べられるとは思いもしなかった」

「そうですね。驚きました」

「……」

「……」

 2人は目も合わせずに、淡々と会話をする。

 一瞬の沈黙。

 そして。

「瑞穂坂の首は、皮一枚で繋がった」

「はい」

「沙耶。この期に及んで尻込みなどしまいな?」

「……」

 信哉が、初めて沙耶の方へと向く。
沙耶は少しだけ目を閉じて、直ぐに開いた。

「当然です」

 サンバッハを手に取り、立ち上がる。

「私は、瑞穂坂の選手ですから」

 そう答えた。



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