「あ〜〜〜〜」
『なんです? その気の抜けた声は』
ベッドに横になり、いきなり声を上げだした雄真に、クリスは訝しげに尋ねた。
「もう疲れたよ。こんなに疲れるなんて思わなかった」
『………まだ開会式どころか、立食パーティーすら始まってないのですが』
「そうなんだよなぁ」
ごろんと寝返りを打つ。
まさかバスで移動して、自分の割り振られた部屋に来るまでに、ここまで疲れるとは思っていなかった。
簡単な昼食は高速のサービスエリアで済ませていたので、特にお腹も空いていない。
立食パーティー開始まで、まだあと3時間近くある。
「ちょっと、一眠り〜」
そう言いながら目を閉じる。
『本来でしたら、外で他校の到着を見たりしながら情報収集を試みるべきなのですが…』
そう言いつつ、クリスはもう半ば諦めていた。
確かに。報道陣対応に、到着するなり七賢人の1人と対立するなど、慣れないことが一気に起こり過ぎた。
『しょうがないですね。時間になったら起こして差し上げます。
パーティーをサボるのは許しませんからね』
「もちろん。………ありがと」
そう言って雄真は、深い眠りへと落ちていった。
Happiness story『小日向雄真と七校対抗魔法大会』
Magic5.集結!! 七賢人次期当主たち!!
「アンタ! 今まで何処行ってたのよ!!」
クリスに起こされ、指定通りの時間に指定通りの場所に行くと、開口一番。杏璃から怒鳴られた。
「ど、何処って。部屋で寝てたんだけど」
「寝てただぁぁ!?」
「なんで!? ちゃんと時間守ってんじゃん!! 駄目だったの!?」
「駄目と言う訳じゃないんだけど…」
苦笑しながら、静香が杏璃の前に立った。
「到着してから、時間。結構あったでしょう?
これは、その間にこのホテルの中を見て回ったり、
その間に会った他校の人との交流の時間として使われていたのよ」
「は、初耳なんですけど」
「うん。言ってなかったね。それは間違いない。
けど。まさかこっちも、初出場の君が堂々と部屋で熟睡するとは思ってなくてねぇ」
「申し訳ございませんでした」
光の速さで土下座した。その姿に幸平が苦笑する。
「ふぅ。まったく毎度毎度。そなたの器の広さには驚かされるわ。本当に底なしよの」
「……すみません」
「ううん。言ってなかったのも悪いんだし。雄真くんのせいじゃないよ?
強制じゃないしね。他の学校の人だって、してない人もいるわけだし」
伊吹の追撃に、わたわたと春姫がフォローする。その横から小雪が口を挟んだ。
「どの学校の生徒も皆、最初に伊吹さん。次に雄真さんに興味を持たれていたようです」
「そ、そうですか」
どもりながら先を促す。
「ですが、肝心の雄真さんがいらっしゃらないではありませんか。
どうなったと思います?」
「ど、どうなったんですか?」
ごくっと唾を飲み込んだ。
「どうやら雄真さんは、“瑞穂坂が隠す最強の秘密兵器”という地位を獲得したようです」
「はぁぁぁ!?」
「自業自得よ!!」
バコン!!
「ぐおっ!!」
雄真の叫び声を、杏璃は拳で黙らせた。
「まぁ、この後のパーティーでも楽しみにしておくがよい。
私はほとんどの学校を回り終えておるからな。今度の注目はそなた1人占めだ」
「い」
「い? 嫌だとは言わせんぞ。そなたは―――」
「伊吹助けて!! お願い!!
立食パーティーの顔合わせでは一緒にいてくれ!!
お前が居てくれないと、俺は駄目なんだ!!」
「ぶっ」
雄真のあまりにもアレな発言に、杏璃が吹いた。
「ゆ!? 雄真!? そなたいったい何を―――」
「あ!! いぶいぶとゆーゆーじゃん!! 中に入らずに何してんの?」
錯乱状態に陥った雄真を伊吹から引きはがそうとどたばたしていると、後ろから声が掛かった。
「八乙女か」
「えへへ。こんばんはー」
パーティー会場入り口でたむろしていた瑞穂坂グループに、新たなグループが近づいて来る。
立食パーティーといえど、集まるのは皆学生。
よって大層な正装をする必要もなく、服装は皆制服だ。
咲夜もそれに倣い、制服姿で現れた。
淡い水色を基調とした制服に身を包んだ咲夜は、ゆっくりとした足取りで近づいて来た。
彼女の後ろには、同じ色の制服を身に纏った男女が続く。どうやらメンバー全員で来たらしい。
「リーダー!! この人であります!!」
咲夜が後ろの女性にビッと敬礼する。
それを苦笑しながら手で制し、1人の女性が雄真の前へとやってきた。
「初めまして、私の名前は安藤ももか(あんどうももか)。
舞浜学園3年。大将に選ばれているの。
小日向雄真君ね? 噂はかねがね聞いているわ。よろしくね」
「は、初めまして。小日向雄真です。よろしくお願いします」
差し出された手を取る。
「後ろに居るのは同じく舞浜学園のメンバーよ。
今年は優勝を狙いに来てる。大会では正々堂々と戦いましょう」
「はい」
「ふふ。じゃあ、お先に。みんな、行くわよ」
「ゆーゆー。またね!!」
ぞろぞろと舞浜学園の生徒たちが会場へと入っていく。
その視線のほとんどが自分に向けられていた自覚があったが、なんとかやり過ごした。
「さて、我々も入るとするか」
「ええ。そうしましょう」
伊吹と小雪に続き、瑞穂坂の面々も会場に足を踏み入れた。
♪〜〜〜。
煌びやかなシャンデリアに、優雅に流れる音楽。
何となく、違う世界に迷い込んだような、そんな気分にさせる光景だった。
間違いなく、高校生が来るような場所ではない。
既に料理や飲み物は揃っており、会場の至る所に設置されたテーブルの上に並べられていた。
至る所にホテルの従業員も控えている。何校かはもう勝手に始めているようだった。
乾杯の音頭があるわけではない。
そもそも、この立食パーティーも強制ではない。
ただの顔合わせとして、日本魔法協議会が親切心で提供しているに過ぎない。
参加が強制されているのは、この立食パーティーの後。
同じ会場で行われる、各校のオーダーとトーナメント戦の対戦相手の発表だ。
そこで発表されたオーダーは、もう何があっても変更はできない。
そう“何があっても”だ。例えこの後に風邪を引いて寝込もうが、家の用事で出場ができなくなろうが、絶対。
『自己責任』に『連帯責任』。出場が不可となった選手は例外なく棄権。いわゆる不戦敗となる。
これは今後巣立っていく魔法使いへの責任を自覚させる為の一環として、七対抗魔法大会の初開催時からの掟となっていた。
「うわぁ。凄いな、これは」
思わず声を漏らした雄真に、春姫がクスッと笑った。
「そうだよね。普通に生活してたら、こんな所になんて来れないもの」
「あ、あの料理が全部タダで食えるのか。凄すぎる」
『貧乏くさい発言はやめて下さい』
クリスから横槍を入れられたが、そんなことは気にしない。
「じゃあ、いただきま―――」
「待て」
がっ
「ぐえ」
早速頂こうと歩き出したところを、伊吹に襟を引っ張られて止められる。
「な、何すんだよ」
「阿呆め。貴様はこれから挨拶周りだ。のんびり食事なんぞしてられるか」
「う、嘘ですよね? 伊吹さん」
「自業自得とはこのことよ。いいのだぞ? 1人で行かせても」
「ついて来て頂いても、よろしいでしょうか?」
雄真は恭しくお辞儀をした。
「ふん。最初からそうすれば良いのだ。行くぞ」
「私も行きます」
小雪が名乗り出た。
「じゃ、頑張んなさいよ、雄真。春姫、よっち。食べに行きましょ」
「そうね」
「う、うん。雄真くん。頑張ってね」
「信哉、沙耶。そなたらも行ってこい。同伴はいらぬ」
「し、しかし―――」
「畏まりました。兄様、参りましょう」
「さ、沙耶。しかしだな」
「伊吹様が良いとおっしゃっているのです。
先ほどの失態、お忘れになってないでしょうね?
行きますよ」
「うぐぅ」
信哉は沙耶に強引に連れて行かれた。それを見て、静香と幸平も続く。
「必要なら呼んでちょうだいね? じゃ、私たちも行きましょう」
「そうだな」
「うむ。楽しんで来るがいい。では、行くとしようか」
伊吹の言葉に、雄真と小雪が頷いた。
「少し、構わないだろうか?」
こちらに背を向けている女性に、伊吹が話しかける。
目を見張る程に、真っ白な髪をした女性がこちらへ振り返った。
「なんでしょうか。あら、伊吹さんではありませんこと。如何なさいまして?」
ゆったりとたおやかに。流れるような声色で、その女性が問うた。
一目見て。まずはびっくりした。こんな綺麗な女性がいるのかと。
魔法科面々含め、高レベルの女性を見慣れている雄真ですら、目を奪われた。
まさに温室育ちのお嬢様とでも言うべき気品に包まれたその女性は、もはや神秘的にすら見えた。
女性は、ゆっくりと視線を動かし、雄真を捉える。
「あら。其方の殿方。先ほどはいらっしゃらなかったようですけれど」
「ああ。すまんな。それで改めて挨拶に来させてもらった」
女性の問いに、伊吹が答える。その返答を聞いて、女性は深々と頭を下げた。
「これはこれは。ご丁寧に。私、名古屋魔法高校・3年。
汐留渚と申します。以後、お見知りおきを」
「…………」
ぐりぃっ
「あいったぁ!!」
「自己紹介せんか!!!」
伊吹に思いっきり足を踏みにじられて、雄真はようやく我を取り戻した。
一連の動作に、完全に目が奪われていたようだ。
「は、初めまして。こひな―――んんっ!!
瑞穂坂学園・2年。小日向雄真と申します。
よろしくおねがいします!!」
がばっと頭を下げる。
相手に比べて品がないなぁ、と雄真は思った。
「貴方が“あの”小日向様でしたか。
お母上・御薙鈴莉様の功績然り。貴方のお噂も伺っておりますよ。
大会では是非、お手合わせして頂きたいものです」
「あ、ありがとうございます。お褒め頂き、光栄です?」
何を言っているのか自分で分からなくなり、最後は不自然に上がってしまった。
「ふむ。では、そろそろ行こうか。汐留、邪魔をしたな」
雄真が持たないと踏んだのか、伊吹が横から割り込んでくれる。
「左様ですか。では、伊吹さん・高峰様・小日向様。また」
優雅にニコリと微笑んで、自分の学園の輪に戻っていく。
それを確認して、雄真は大きくため息を吐いた。
「一目惚れですか?」
「………違う。……と思います」
「ほぉ? この話題には珍しく、断言せぬな?」
見とれてしまっていたのは、事実。
ただ、恋愛感情ではなかった………はずだ。
「汐留渚。あの方は七賢人が一角。
“水の加護を受けし一族”・汐留家の次期当主です。
今大会も、名古屋魔法学校の主将を務めると聞いています」
「あの人も七賢人…。ん? 今大会“も”?」
小雪の発言が気にかかって、雄真は聞き返した。
「今大会“も”です。彼女は、高校入学から3年間。
七校対抗魔法大会出場その全てが主将としての参戦です」
「い、1年の時から?」
「そうです。1年の時から既に主将をやっていました」
「そんな凄い人だったのか」
「あやつは汐留一族の中でも、近年稀に見る逸材だと聞く。
かつての那津音姉さまがそうであったように、今の汐留一族では天才扱いだ」
「へぇ」
伊吹は一瞬だけ遠い目をしたが、直ぐに気を取り直した。
「さて、次だ………と言おうとしたが、必要なかったな。
どうやら向こうから出向いて来たようだ」
伊吹の視線に倣ってそちらを向くと、1人の少女がこちらに歩いて来るところだった。
「こんにちは、少しお時間宜しい?」
「ああ。丁度そちらに行こうと思っておったのだ。ほれ、雄真」
「あ、ああ。初めまして。瑞穂坂学園の2年。小日向雄真です。
よろしくお願いします」
丁寧に頭を下げる。
「やっぱり小日向先輩だったんですね?
先ほどは見かけなかったので、もしやとは思ったのです。
私は浅草舞。静岡魔法学園の1年生です。
これからよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる。背は伊吹と同じくらいだろう。
少し茶色がかったおかっぱヘアーがサラリと流れる。
浅草。確か“雷の加護を受けし一族”と聞いていたはずだ。
(この子も、七賢人)
「じぃ―――」
「あ、あの。そうやって見つめられると、恥ずかしいのですが」
「へ? ああ、ごめん!!」
思わず凝視してしまったらしい。
頬を染めて俯いてしまった舞に、慌てて頭を下げる。
「まぁまぁ。雄真さん。“今度は”浅草さんに手を出すおつもりで?」
「そういう誤解を招く発言するのやめて下さいよ!?」
小雪のあんまりにもなセリフに、思わず雄真は叫んだ。
「よぉ。雄真。相変わらず楽しそうじゃないか」
「へ?」
突然声を掛けられ、後ろを振り返る。そこには見知った2つの顔が合った。
「信!! 空!!」
「久しぶり、でもないか。そちらも相変わらずのようだな」
「こんにちは、信さん。空さん」
「神威先輩。こんにちは」
雄真の声に続いて、伊吹・小雪・舞が順番に頭を下げる。
「おう。何だ、浅草もいたのか」
「すみませんね、小さくて」
「おいおい、拗ねるなよ。
珍しい組み合わせだと思っただけだ。
なぁ、空」
「そーですねー」
「?」
空はそっぽを向きながら、投げやりな回答をした。
珍しい。1回しか会っていないが、そういった性格ではなかったはずだ。
「空? どうかしたのか?」
雄真が思わず尋ねてみる。するとジト目で返された。
「別に? 私は何も変わりないですよ?」
直ぐに目線を逸らす。雄真が首を傾げていると、信が笑いを噛み殺しながらこう告げた。
「くく。こりゃお前のせいだぜ? 雄真。こいつは今、焼きもち焼いてるんだ」
「や、焼きもち?」
「お兄様!!」
さらに「?」が増える雄真を尻目に、空が信に食って掛かった。
「そういったおかしなことを言うのはやめて下さい!!」
「おかしなことではないだろう」
空の口撃を躱しながら、信は尚も続ける。
「お前ら、さっき汐留のところに挨拶行っただろ?
そこで雄真が鼻の下伸ばしてるの見てから、こいつずっとこうなんだ」
「お兄様ぁ!!!」
強引に手で口を塞ごうとするが、信は華麗なステップで躱し続ける。
「は、鼻の下……。……………伸びてた?」
「はい。それはもう。今にも視姦しそうな勢いで」
「し、しかっ!?」
「小雪!! 貴様、そのような単語をこのような場で出すでない!!!」
雄真の代わりに、伊吹が吼えた。
「しょうがないじゃないですか。
横にいるだけの私ですら、身に恐怖を覚えました。
あぁ。雄真さんのはぁはぁという荒い息遣い。
今でも鮮明に思い出せます」
「ちょっと!?」
「そ、そうなんですか!? 雄真さん!!!」
「うおぉっ!?」
一瞬で間合いを詰めて来た空に、雄真がたじろぐ。
「ええ。もう間違いありません。この高峰小雪。嘘は申しません」
「はいダウト!!! その発言が既にダウト!!!」
「うぅ…」
「へ?」
見れば空が目に涙を溜めてこちらを見ていた。
――――涙?
「雄真さんの不潔―――!!!」
だっ!!
「不潔!? ちょっと空!! 空さん!?
誤解ですって!!!!」
空は雄真の声には聞く耳持たずに走り去っていった。
「あ……あ、あぁ…」
「えと。じゃあ、私はここで失礼しますね。では、また!!」
徐々に後ずさりしていた舞が、皆の返答を待たずにそそくさと逃げ出す。
真っ白になった雄真は、口をパクパクしながら空が走り去っていった方角を見ていた。
「だから言ったのです。女性は1人に絞れ、と」
「何の話だ―――!!!!」
「はははははっ!!
まったく本当に飽きん奴らだな、っと。
ようやくお出ましか」
信の言葉に、皆が振り返る。
そこでは、新たな学校の選手たちが、丁度会場入りするところだったらしい。
その先頭にいた男がこちらに気付く。
信が手を振ったのを見て、こちらに近付いて来た。
「遅かったな。鉄平」
「うむ。オーダー決定が難航してな。つい今しがた終えたところだ」
でかい。それが第一印象。
雄真自身、自分の身長は同学年の男子生徒と比べても平均ぐらいだと思っている。
信はそれよりも若干高いくらい。しかし、この男は、信よりも遥かに大きい。
普通に2mくらいはありそうだ。髪は剃り上げており、お寺にいれば住職の人と疑わないだろう。
……こんな威圧感漂う住職の方も珍しいだろうが。
「久しいな、乃木」
「ほう。式守か。そうかそうか、遂にお主もこの舞台に上がる年となったか」
「ああ。任せておくがいい。
今大会、最高学年である貴様ら2人に、揃って引導を渡してやろう」
伊吹が不敵に笑う。それを見て、信と男は笑った。
「ははは。ふかすじゃないか、伊吹。こりゃ試合が楽しみだ」
「まったくだ。して、そちらは? 高峰は知っているが…」
「あ。初めまして。
瑞穂坂学園の2年。小日向雄真です。
よろしくお願いします」
自分の事だと気付き、雄真は慌てて頭を下げた。
「小日向雄真。お主がそうであったか。
色々と噂は聞いておる。今年の瑞穂坂は、なかなかに逸材揃いのようだな。
俺は乃木鉄平。仙台魔法学園3年だ。よろしくな」
がっしりと握手を交わす。
「さて、飯でも食うとしよう。鉄平。一緒にどうだ?」
「うむ。そうするか。ではまた。式守・高峰・小日向」
「ああ」
「はい」
「はい」
2人が並んで料理の方へ歩いていくのを見計らって、小雪が雄真に向き直った。
「乃木鉄平さん。“土の加護を受けし一族”、その次期当主です」
「凄く風格のある人だったな」
2人の背中を見送りながら、雄真は呟いた。
「さて、これで一応七賢人の候補者たち全員は回れたな」
「目黒さんの一件を、挨拶とカウントすれば。ですけどね」
「うぐっ!?」
記憶から抹消したい事実を堀り起こされ、雄真が頭を抱える。
きょろきょろと会場を見渡してみた。
いた。会場の端の方に同じ制服を纏った者たちと食事をしている。
幸いにして(?)雄真には気づいていないようだった。
「さあ、最後の一校へご挨拶に伺いましょうか」
「結構です!?」
意気揚々と東京都立の元へと馳せ参じようとする小雪の腕を掴む。
「あ、挨拶はほら…しましたし」
「ほほほう? “あれ”が雄真さん流の挨拶なのですね? 勉強になります」
「何の勉強!?」
「まぁ、ある意味ご挨拶でしたしね」
「もうその辺にしておかぬか、小雪」
小雪が雄真を面白おかしく攻めているところを、伊吹が制する。
「まぁ、済んでしまった事は仕方あるまい。
向こうも七賢人。手荒な事はしては来ぬわ。
さて、私たちも食事にするとしよう」
「そうですね、仕方ありません。雄真さん、お疲れ様でした」
「いえ、こちらこそありがとうございます。
伊吹も。付き合ってくれてありがとう。
って!? 仕方ありませんってなんですか!!」
「ですから面白い事態にならなくて残念だな―――こほん。
折角七賢人の次期当主の方々が勢ぞろいしていらっしゃるのですから、
きちんと最後まで挨拶して回るべきかなと思っただけですよ」
「にこやかに嘘つくのやめてくれません!?」
「………先にいくぞ」
ウンザリした調子で伊吹が踵を返す。
立食パーティーにて、雄真が一番目立っていたのは言うまでもないことだろう。
ホールには、雄真の悲痛なる叫びが延々とこだましていたのだから。
励みになります。
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Leica
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