「―――正々堂々と、戦い抜くことを誓います!!!」
信の声が、高らかに響く。
選手宣誓。昨年度優勝校・京都府京帝高校選手。
そして、去年度選手MVPを獲得していた神威信が、今年の大役に選ばれていた。
信が持っていた優勝トロフィーを、日本魔法協議会副議長・大森零に手渡す。
壇上にて、金色の輝きを放つそれは。
再びどの校も取得し得る、平等な地位へと返還された。
パンパンッ!! パパンッ!!
真っ青な空に、花火が鳴り響く。信が壇上から下がり、零が前を向く。
選手一同。そして集まった大観衆を前にして、零は一言こう告げた。
『七校対抗魔法大会高校戦、ここに開幕を宣言する!!』
会場が熱気の嵐に包まれた。
Happiness story『小日向雄真と七校対抗魔法大会』
Magic7.開幕
○七校対抗魔法大会 2日目
≪ターゲットアタック 1回戦(10:00〜13:00)≫
備考:昨年優勝校・名古屋魔法高校は、1回戦シード。
Aブロック
第1試合
南修平(静岡) 対 飯田剛(仙台)
第2試合
鳳健吾(東京都立) 対 桜井誠(京帝)
第3試合
東山幸平(瑞穂坂) 対 梅田幸喜(舞浜)
シード校
汐留渚(名古屋)
Bブロック
第1試合
高峰小雪(瑞穂坂) 対 林真(仙台)
第2試合
安藤ももか(舞浜) 対 一之瀬了(京帝)
第3試合
三戸部三郎(東京) 対 毛利哲也(静岡)
シード校
茅ヶ崎愛(名古屋)
≪バルーンクラッシュ 1回戦(14:00〜16:00)≫
備考:昨年度優勝校・京帝高校は1回戦シード。
Aブロック
第1試合
藍本静香・東山幸平・吉田小百合(瑞穂坂) 対 稲本美智子・塩田修平・前田一典(舞浜)
第2試合
鳥取晴香・藤枝知美・白百合由利(仙台) 対 林金平・閣銀二・佐藤手毬(静岡)
第3試合
目黒竜也・藤原友則・大金利通(東京) 対 静本綾香・西山さゆ・茅ヶ崎愛(名古屋)
シード校
一之瀬了・星城聡・渡辺正和(京帝)
Bブロック
第1試合
芝修二・飯田茂田・谷保みどり(東京) 対 南修平・桶口良平・御手洗大輔(静岡)
第2試合
神坂春姫・小日向雄真・柊杏璃(瑞穂坂) 対 大原千絵・加藤浩太・森平治(舞浜)
第3試合
岸信弘・北川明・米本さつき(名古屋) 対 飯田貞治・原寺平蔵・吉本キチ(仙台)
シード校
三井良平・桜井誠・向井正春(京帝)
≪ダブルス 1回戦(17:00〜19:00)≫
備考:昨年度優勝校・京帝高校は1回戦シード。
Aブロック
第1試合
鳳健吾・谷保みどり(東京) 対 桑田雄二・二宮誠(名古屋)
第2試合
閣銀二・大西裕也(静岡) 対 上条信哉・上条沙耶(瑞穂坂)
第3試合
鳥取晴香・藤枝知美(仙台) 対 蔵屋敷美紀・大原千恵(舞浜)
シード校
星城聡・向井正春(京帝)
Bブロック
第1試合
乃地浩太・白百合由利(仙台) 対 日立ニオ・菅野宮重次(静岡)
第2試合
静本綾香・西山あゆ(名古屋) 対 加藤浩太・稲本美智子(舞浜)
第3試合
藤崎友則・大金利通(東京) 対 神坂春姫・小日向雄真(瑞穂坂)
シード校
神威信・児玉白(京帝)
開会式は当初の予定より若干早く、20分ほどで幕を閉じた。
去年より日本魔法協議会副議長に就任したという大森零が、
あまり長話を好まなかったという事実も、この時間短縮に多大な影響を与えていたと言える。
「その点、あの男は合格点ね」とは杏璃の弁。
話の長さで重役の良し悪しを判断するわけではないが、確かにああいった場でのお偉いさんの長話はきつい。
そう思っていた雄真も、杏璃の言葉には特に異論を放たなかった。
競技開始は予定通り10時から。最初はターゲットアタックだ。瑞穂坂から出場するのは共に3年の2人。
Bブロック第1試合の大将・高峰小雪と、Aブロック第3試合の魔法生徒会副会長・東山幸平。
出番が無い雄真たちは、一度ベースとなる本部へと戻ってきた。
本部は試合会場から徒歩5分ほど離れた場所にあり、一般人は立ち入り禁止区域。
各校それぞれに、専用の簡易テントが設けられている。
(簡易とは言っても、入るには専用のパスがいるし、盗聴盗撮防止の機能も付いている優れもの)
会場にて直接観戦する事もできたが、その為には一般客も入っている観客席へと行かねばならない。
雄真は既にホテル入りの段階で顔が割れてしまっている為、一般客の入る場所で観戦すればパニックになりかねない。
――――という大義名分を用い、(実際は初陣ということもあり、緊張気味の雄真を落ち着かせる為)
「直接観戦して下さい」オーラを出していた小雪をなんとかやり過ごした。
その代わりに、テントの中に設置されている観戦用モニターにて、しっかりと試合を見ておく事を命じられた。
「後で試合の感想を聞かせて下さいね? ふふふふふ」と意味ありげに笑った小雪に従い、モニターの電源をオンにする。
「おお。凄いな」
雄真は画面を見て、そう呟いた。
「結構綺麗に映るでしょう?それに画面分割もできるから、
この先試合が重なることになったとしても、両方とも見逃さずに済むわ」
「へぇ」
杏璃の言葉に雄真はうんうんと頷く。
今から行われるターゲットアタック。
そしてバルーンクラッシュ・ダブルスの3種目は、
参加数が多いためブロックを2つに分けてトーナメントが行われる。
AとB。それぞれで1位・2位を決めた後、
1位同士で1・2位決定戦、2位同士で3・4位決定戦が行われる。
序盤から同校で潰しあいが起こらぬよう、2人はAとBそれぞれに配置される決まりとなっていた。
得点はトーナメントで1勝する事に、その高校に10点入る。
ようは勝ち進めばそれだけ点数が加算される、という事だ。
それに加えて、上位入賞すればボーナス点が入る。
優勝50点。準優勝30点。3位20点。4位10点。
ここで言う優勝とは、もちろん2ブロック合わせた結果の事を指す。
ちなみに、シード校に選ばれている学校は、1回戦では戦わない。
出場は2回戦からとなるが、得点はきちんと加算される。
つまり、1回戦は戦わずして既にA・B合わせて20点が加算されるという事だ。
「第1試合は……っと。小雪さんは仙台魔法学校。で、第3試合で東山先輩は舞浜学園か」
雄真がトーナメント表を見ながら呟く。
「番狂わせさえなければ、負けは無い。問題は2回戦になるな」
伊吹の声に、信哉と沙耶が頷いた。ターゲットアタックAブロック。
幸平が1回戦を勝利すれば、2回戦で当たるのは…。
「去年、ターゲットアタックでは名古屋魔法高校が優勝を勝ち取った為、
1回戦はシード通過です。2回戦は瑞穂坂と名古屋になります」
「汐留渚殿との一騎打ちになるであろうな」
沙耶と信哉が伊吹の言葉に続いた。
「クジ運が悪かったとしか言えぬな。まさか大本命と2回戦目で当たってしまうとは…」
「……まだ、東山先輩が負けるって決まったわけじゃないだろ」
雄真の発言に、その場にいた春姫・杏璃・伊吹・信哉・沙耶の全員が固まる。
「……あのな、雄―――」
「そうだね、雄真くん。私たちは精一杯応援しよう!!」
伊吹を遮って、春姫が笑顔で言った。
「ああ、もちろんだ」
「おおっ!! もうみんな集まってるね!!」
陽菜がテントに入って来る。
「そろそろ始まりますよ」
「うん。みんなここで見る事にしたんだ?」
「ええ。藍本先輩と吉田さんはAブロック会場ですが」
陽菜の問いに、雄真が答える。
「うんうん。バルーンクラッシュで組む3人だからね。
メンバーの試合は生で見た方が良いよ。特に吉田さんは初、だしね。
じゃあ、高峰さんの方は誰も行ってないんだ?」
「だからこそ、小雪さんには申し訳ないことをしたなぁ…」
「ふん。雄真よ。そなたはまず、自分の事を考えておくがよい。
この次はそなたの試合なのだからな」
「そうよ。別に小雪先輩の試合、全てすっぽかすわけじゃないんだから。
まずは大会の空気に慣れて、それから他の事でも考えなさい」
「おっけー。分かった」
伊吹と杏璃からの忠告を、雄真は素直に受け止めることにした。
わぁぁぁぁぁぁっ!!!
会場は既に、満席御礼ともいうべき人数が集まっていた。
今大会は人材発掘の場としても、非常に有用な価値を持つ。
よって、魔法関連会社や国の軍隊の重役なども観戦する事が多い。
魔法使いとして未だ成長段階である高校対抗戦は、大学対抗戦に比べるとそういった人間の数は少ない。
しかし、今年は例年までの基準は全て通用しないようだ。
「あそこに居るのは、マジックミルトコーポレーションの重役ね。
あっちはライノス株式会社の重役。それに―――」
「藍本会長。も、もう結構ですから」
観客席の、それも前の方の席を陣取った静香と小百合。
静香は辺りをきょろきょろ見回しては、そういった層々たる顔ぶれを小百合に教えまくっていた。
本来ならば雄真たちと一緒に本部へと戻り、初出場への緊張を少しでも和らげようとしていたところ、
バルーンクラッシュでチームを組むことになっていた静香に捕まった。
ただでさえドキドキしっぱなしのところに、
周りが超VIPで占められているという事実をひたすらに教えられては心臓が持たない。
「そう?」
あっけらかんと答えた静香は、改めて自分の席に座りなおす。
しかし、ほっとした小百合に向けて更なる事実を突きつけた。
「ここにいるのはあくまで“重役止まり”よ?
こんな事でドキドキしていたら、勝ち進んだときに心が持たないわ」
「………はい?」
たっぷりと沈黙してしまった小百合は、壊れたロボットのようにぎぎぎっと静香に顔を向けた。
「七対抗魔法大会には、社長クラスの人物も多々観戦に来るわ。
今はおそらくBブロックの方にいるのでしょうね。あちらは1回戦第1試合に高峰さんが出場するから」
「はぁ」
驚愕の事実に、小百合は他人事のように頷いた。
「何を呆けているのよ。明日からはこっちが大注目を浴びることになるわよ
Aブロックの2回戦以降は、ターゲットブロックの目玉の1つなんだからね」
「ああ、なるほど」
小百合が納得したかのように、トーナメント表に目を落した。
「七賢人“水の加護を受けし一族”汐留渚。ターゲットアタックの優勝候補よ。
去年の試合は見に来てたんだっけ?」
「はい」
「どう感じた?」
トーナメント表を折り畳みながら、小百合は答えた。
「属性魔法の優劣なんて、当てにならないって事だけは良くわかりました」
『これより、ターゲットアタック第1回戦・第1試合を開始いたします』
AとB。2つの会場に、ほぼ同時にそのアナウンスが流れた。
「ちょっとハチ! 急ぎなさいよ。小雪先輩の試合始まっちゃうわよ」
「ハチさ〜ん!! こっちですよ〜!!」
「おう!! お待たせ」
ハチは持っていたドリンクを準とすももに手渡した。
「ありがとうございます、ハチさん」
「ありがと、ハチ。ほら座りなさいよ」
「あいよ」
ハチが準に取ってもらっていた席に座る。
「なんかどきどきするな」
「貴方が緊張してどうするのよ…」
「でもでも、やっぱり楽しみですよね〜」
すももがパンフレットを開きながら、わくわくした声でそう話す。
「ターゲットアタックっていうんだったよな?」
「そうです。
相手のコートにある得点板に魔法を当てていく競技みたいですね。
自分のところの得点板を守りつつ、相手の得点板を攻める。
攻守共に試される競技らしいです」
「得点板には数字が掛かれていて、当たった数字がそのまま持ち点に加算されるわ。
だから、守るにしても、どう守るかが重要になってくる。
全てを守り通すのか。それとも低い点数は諦めて、高得点だけは避けるか」
「それは逆に攻撃の仕方についても言えるってことだ。なるほどなぁ〜」
うんうんと頷きながらハチが答える。
それを見て、準が意地の悪い笑みを浮かべた。
「ま。頭が無いハチには向いてない競技と言えるわね」
「なにをぉ!?」
『選手入場です』
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
「あ!! 小雪さんです!!」
ハチの叫び声は、観衆の歓声に掻き消された。
『ターゲットアタック・Bブロック。
第1回戦第1試合。
瑞穂坂学園3年・高峰小雪対仙台魔法学校2年・林真(はやしまこと)』
画面から、入場のアナウンス音声が聞こえてくる。
「いよいよだ」
雄真が手を握りしめるのを見て、伊吹が苦笑した。
「案ずるな、雄真よ。この試合を落すほど、小雪は腑抜けではない」
「ああ」
短く頷いた後、雄真は自分に言い聞かせるように呟いた。
「分かってる」
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
「例年通り、凄い歓声ですねぇ」
『そうやな。流石は姐さんですわ』
『構え!!』
審判の声に、小雪は目の前の対戦者に視線を戻した。
ワンドを持つ手が少し震えているのが分かる。
武者震いではなく、純粋なる緊張から来るものだろう。
去年の仙台オーダーに、彼の名前は無かった。おそらく初出場。
「いきなり敗北を与えてしまうのは、少し気が引けますが」
『おお? なんや姐さん。勝利宣言でっか?』
「もちろん。この大会。私は強気なのです」
雄真さんに直接見てもらいたかったのに。その腹いせです。
とは、口が裂けても言えない。
『始め!!』
ビ――――――――――ッ!!!
開始ブザーが鳴った。
「タマちゃん!!」
『はいな〜!!!』
ギュオン!!!!
開始直後、小雪の元からタマちゃんが発射される。
目にも見えぬ速さで相手陣地に突入した。
「アルト・メ……――――へ?」
ガァァァンッ!!!
詠唱を始めたばかりの林の横をすり抜け、タマちゃんは後方の得点板に迷うことなく直撃した。
ピ―――――ン
『瑞穂坂学園。10ポイント』
得点が加算されたアナウンスが流れる。
「駄目ですよ、タマちゃん!
ちゃんと高得点のところを狙って頂かないと!」
『了解や〜』
ガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!
小雪の指令を受けたタマちゃんは、あろうことか得点板における最高得点(50点)の部分でバウンドを繰り返した。
ピピピピピピピピピピピピピピピピ!!!!
瑞穂坂学園のスコアが、目にも止まらぬスピードで上がり続ける。
「うわわっ!? 止まれよこのやろう!!」
バシュッ!!!
慌てた林は無詠唱で作り出した魔法球を、タマちゃんに向かって放つ。
ガァァァァァンッ!!!
それを軽やかに避けたタマちゃんは、バウンドを再開した。
(外れた魔法球は林自身の得点板に直撃し、自殺点となった)
ガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!
「ちょっと―――!?」
「馬鹿野郎!! 攻撃しろよ!!!」
観客の中から林に声が飛ぶ。
どうやら仙台魔法学校の生徒が観戦に来ていたらしい。
そのアドバイスを受け取り、ようやく林は攻撃に転じた。
「アルト・メント・フィルター!!!」
「残念でした。レム・ラダス・アガナトス!!」
林より放たれた魔法球は、小雪が作り出した魔法の渦に直撃するものの、威力負けして消え去った。
その瞬間。
ビ――――――――――ッ!!
『試合終了です。
瑞穂坂学園のスコアが、コールド10000点に達しました。
Bブロック第1回戦第1試合は、瑞穂坂学園3年・高峰小雪の勝利とします』
「やりました」
無表情で小雪が勝利宣言をした。
「そんな!?」
林が崩れ落ちる。
一拍遅れて、会場から拍手に拍手が響いた。
「………うそぉ」
食い入るように画面を見つめていた雄真は、思わずそう呟いた。
試合が始まって1分ちょいだ。いつの間にか終わっていた、そんなレベル。
「このルールは、小雪の持つワンドにはうってつけだ。
あ奴のスフィアタムも“魔法攻撃”であることには変わりない。
自立して動けるスフィアタムは、術者本人の行動とは別に、
相手のフィールドを縦横無尽に駆け巡ることができる」
「相手の得点板にさえ辿り着いてしまえば、小雪様の勝ちですね」
「流石は小雪殿だ」
伊吹・信哉・沙耶が手放しで絶賛する中、雄真は1人で固まっていた。
「なに情けない顔してんのよ。勝ったんだから喜べばいいじゃない」
雄真を小突きながら杏璃が言う。
「………まぁ、そうだな」
想像とは遥かに異なった試合展開だったが、雄真は無理矢理納得することにした。
「ぃようしっ!! まずは一勝!!」
後ろで陽菜が騒いでいる。雄真は画面に目を戻した。
その先では、いつも通りの表情でフィールドを後にする、小雪の姿が映し出されていた。
励みになります。
個人情報登録等は一切ございませんので、
作品が気に入って頂けましたらお願いします。
優勝校予想アンケートは終了しました。ご協力ありがとうございます。
最終結果につきましては、改めて専用ページを設けたいと思います。
Leica
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