≪ターゲットアタック 1回戦結果≫
備考:昨年優勝校・名古屋魔法高校は、1回戦シード。
Aブロック
第1試合
南修平(静岡) × 対 ○ 飯田剛(仙台)
第2試合
鳳健吾(東京)× 対 ○ 桜井誠(京帝)
Aブロック2回戦第1試合は、飯田剛(仙台) 対 桜井誠(京帝)に決定。
第3試合
東山幸平(瑞穂坂) ○ 対 × 梅田幸喜(舞浜)
シード校
汐留渚(名古屋)
Aブロック2回戦第2試合は、東山幸平(瑞穂坂) 対 汐留渚(名古屋)に決定。
Bブロック
第1試合
高峰小雪(瑞穂坂) ○ 対 × 林真(仙台)
第2試合
安藤ももか(舞浜) ○ 対 × 一之瀬了(京帝)
Bブロック2回戦第1試合は、高峰小雪(瑞穂坂) 対 安藤ももかに決定。
第3試合
三戸部三郎(東京) × 対 ○ 毛利哲也(静岡)
シード校
茅ヶ崎愛(名古屋)
Bブロック2回戦第2試合は、毛利哲也(静岡) 対 茅ヶ崎愛(名古屋)に決定。
Happiness story『小日向雄真と七校対抗魔法大会』
Magic8.小日向雄真、公式戦デビュー
○現在の学校順位
3位:仙台魔法学園(宮城)10P
7位:東京都立魔法学園(東京)0P
1位:瑞穂坂学園(神奈川)20P
3位:舞浜学園(千葉)10P
3位:静岡魔法学園(静岡)10P
1位:名古屋魔法高校(愛知)20P
3位:京帝高校(京都)10P
大会2日目。
まずはターゲットアタックの第1回戦の工程が、全て終了した。
得点は、シード名古屋魔法高校とA・B共に1勝を上げた瑞穂坂学園が20点で同率1位。
3位には、Aで勝利を挙げた仙台魔法学園と京帝高校。Bで勝利を挙げた舞浜学園と静岡魔法学園が入る。
7位にA・Bで共に勝利を収められなかった東京都立魔法学園がついた。
この点差を維持したまま、次なる種目・バルーンクラッシュに移行する。
瑞穂坂学園は、Aブロックに藍本静香・東山幸平・吉田小百合。
Bブロックに小日向雄真・神坂春姫・柊杏璃となっている。
バルーンクラッシュ優勝候補に挙げられているチームは、
Aブロックの七賢人“闇の加護を受けし一族”目黒竜也率いる、東京都立魔法学園。
順当に勝ち進めば、静香たちは3回戦(Aブロック内での1位決定戦)にて激突する。
≪バルーンクラッシュ 1回戦(14:00〜16:00)≫
備考:昨年度優勝校・京帝高校は1回戦シード。
Aブロック
第1試合
藍本静香・東山幸平・吉田小百合(瑞穂坂) 対 稲本美智子・塩田修平・前田一典(舞浜)
第2試合
鳥取晴香・藤枝知美・白百合由利(仙台) 対 林金平・閣銀二・佐藤手毬(静岡)
第3試合
目黒竜也・藤原友則・大金利通(東京) 対 静本綾香・西山さゆ・茅ヶ崎愛(名古屋)
シード校
一之瀬了・星城聡・渡辺正和(京帝)
Bブロック
第1試合
芝修二・飯田茂田・谷保みどり (東京) 対 南修平・桶口良平・御手洗大輔(静岡)
第2試合
神坂春姫・小日向雄真・柊杏璃(瑞穂坂) 対 大原千絵・加藤浩太・森平治(舞浜)
第3試合
岸信弘・北川明・米本さつき(名古屋) 対 飯田貞治・原寺平蔵・吉本キチ(仙台)
シード校
三井良平・桜井誠・向井正春(京帝)
『バルーンクラッシュ・Aブロック。
第1回戦第1試合。
瑞穂坂学園、藍本静香・東山幸平・吉田小百合対
舞浜学園、稲本美智子(いなもとみちこ)・塩田修平(しおだしゅうへい)・前田一典(まえだかずのり)
の試合を開始します』
『バルーンクラッシュ・Bブロ―――――
ブチッ!!
杏璃が選手控室にあったモニターの電源を切った。
雄真たちの試合は第2試合。今Bブロックでは、
東京都立魔法学園と静岡魔法学園の試合が始まったはずだ。
「藍本先輩や東山先輩。そしてよっちなら必ず勝つわ。
それに、今は別にBブロックの試合経過なんてどうでもいいでしょ?
自分たちの事を考えましょ」
杏璃の言葉に頷く。雄真たちが順当に勝ち進めば、
今Bブロックの方で行われている試合の勝者と次の2回戦で戦う事になる。
が。別に今その試合を見る必要はない。大会の競技は全て映像として記録されている。
相手のチームの研究をしたいのなら、自分たちの試合が終わってからビデオで見れば済む話だ。
「じゃあ、作戦のおさらいをしよう?」
春姫の提案に応じ、杏璃と雄真は席に着いた。
ここは選手控室。
次に試合を控えている選手が利用できる、簡易スペースだ。
(ここでも簡易とは名ばかりで、入室パスや盗聴盗撮防止機能は付いている)
杏璃がオフにしていたが、ここにも観戦用のモニターが付いている。
ほとんど各校に与えられているベースキャンプと同じ役割を果たしているのだ。
一つ違う点は、控室である為に利用するのが一校固定ではなく、
時間によって交代で利用することになる、という事だけだ。
「キング、つまりバルーン装着は私。ポジションは牽制と防御」
春姫の言葉に杏璃と雄真が頷く。
「んで、私と雄真が攻撃部隊ね」
「ああ。ひとまずはそれで様子見だな。
何か不都合があれば、次の試合から変えていくしかない」
「そうね」
「攻撃を仕掛ける手順も分かってるな?」
「もちろん」
雄真の問いに、杏璃は自信たっぷりに言い切った。
「アンタはスタートと同時に身体強化で先回り。
相手の後ろを取り次第、攻撃開始。私は前から正面突破を図る。
うまく挟み撃ちに持ち込めれば、そう長くは持たないわよ」
「ああ。フィールドはどうする? 最初に指定できるんだろう?」
春姫の方を向いて、雄真が尋ねる。
「うん。私は森林がいいと思うな。
後ろを取るなら、視界は悪い方が良い。
草原にしちゃうと、横をすり抜ける時にばれちゃうよ」
「確かに。そりゃそうか」
春姫の指摘に、雄真はうんうんと頷いた。
「こんなところじゃない?
後は春姫がしっかりバルーンを守ってくれればいいだけよ」
「任せておいてよ、杏璃ちゃん」
春姫がポンと胸を叩く。
「ま、キングは春姫以外は無いと思うけどな」
「どうしてよ」
雄真の発言に、杏璃が首を傾げる。
「だってそうだろ。
俺は身体強化による近接が主体だからな。
バルーンは邪魔にしかならない。
対してお前は後衛ではあるものの、守備がザルだ」
「な、なんですってぇ〜?」
「自覚は無いのか?」
「うぐっ」
正面切って言われ、杏璃は言葉に詰まった。
「………これで勝ったとは、思わない事ね」
「もちろん。これから勝ちに行くのさ」
微妙に噛み合っていない会話に、春姫と杏璃は目をぱちくりとさせた。
その表情を見て自然と零れ出る笑みを押さえ、雄真は立ち上がった。
「俺たち3人なら、優勝なんて軽いさ。
俺は春姫と杏璃を信じてる。だから、頑張ろう」
手を差し出す。
「………ゆ、雄真くん」
「………雄真」
「………?」
直ぐに手を重ねて来てくれるかと思っていたが、
その予想は見事に外れてしまった。
2人とも顔を赤くしてもじもじしている。
(……こういう展開って女の子には通用しないんだっけ?)
雄真がそう考えた直後、
「うん!! 頑張ろうね、雄真くん!!」
「やってやろうじゃない!! 私たちの力、見せつけてあげるわ!!」
がっ!!
3人の手が、合わさる。皆、自然と笑みが零れた。
ピ――――ン
ほぼ同時に、部屋に呼び出しの音が鳴る。どうやら出番のようだ。
「さぁ、行こう」
小日向雄真、初の公式戦の幕が開けた。
「すげー人が入ってる割には、やけに静かだよな」
「なんかピリピリしてます」
Bブロックの会場は既に全ての席が埋め尽くされていた。
立ち見の人ですら居場所に窮屈を感じるレベルの人数が、今この会場に集結している。
おそらく、Aブロック会場は今頃ガラガラだろう。
この大会を観戦に来た観客のほぼ全てが、この試合の開始を今か今かと待ち侘びていた。
しかし、その人数に比例することなく、会場は静寂を保っている。
話し声など、ほとんど聞こえてこない。
それに違和感を感じたハチとすももは、その原因を突きとめようときょろきょろしていた。
それを見て、準は1つため息を付いた。
「そりゃそうでしょう。皆、見定めようとしてるのよ。
雄真がこれだけの注目を集めるに値する人物かどうか、ってね」
がさっ
そう言いながら、準は新聞の束を取り出した。
「うお!? なんだよ、その新聞の量は。1部や2部じゃねぇだろ」
「ええ、学校の送迎バスに乗り込む前に買っておいたの。今朝の朝刊全部」
「ちょ、朝刊全部ですか!?」
準の言葉にすももは驚きの声を上げた。
「そうよ。今日の一面記事は揃って七対抗魔法大会・高校対抗戦。
式守さんとかの七賢人集合だのなんだので占められてる。
――――――けど」
「けど?」
一旦言葉を切った準に、ハチが訝しげに尋ねる。
準はお目当ての記事をいくつか見つけると、ハチとすももに手渡した。
「それ雄真の記事でしょ?
ページにはもちろんバラつきがあるけど、取り上げてない新聞は1つもなかったわ」
「おお!! 本当だ!!」
「に、兄さんです!!」
ハチとすももは、お互いの新聞を交換し合いながら、その記事に目を通す。
『小日向雄真、その実力は!?』
『遂にベールを脱ぐか。御薙の後継者』
『七賢人の血を2つ有する京帝。三連覇に待ったをかける、期待の星』
『雄真君の素顔』
煽り文句こそ違うものの、確かにどれも雄真の事を指しているのは間違いない。
「……準。なんで『雄真君の素顔』欄だけ、ラインマーカーでチェックしてんだ?」
「こほん。そんなことは些細な事よ」
準は軽く咳払いした後、その記事だけ取り上げた。
「それにしても、兄さんってここまで注目されていたんですね。
だ、大丈夫なんでしょうか、試合は…」
すももが今更のように呟く。それを見て、準がふっと笑った。
「かんけーないわよ。雄真はやる時はやる男なんだから」
「よお汐留。お前らのところも見に来たのか」
「こんにちは。渚さん」
「こんにちは、信さん、空さん。
ええ。小日向様は、今大会の注目株でいらっしゃいますから」
信と空に声を掛けられ、渚はゆっくりとした足取りで2人に近付いた。
後ろから、同じ名古屋魔法学校の生徒たちも付いてくる。
「渚さん。残念ながら、もう観客席はいっぱいになってしまってるようです」
「構いませんよ。それだけこの試合に注目が集まっているということでしょう。
幸い、こちらは多少空いているようですし、このままこちらで拝見致しましょう」
「わかりました。皆さん、こちらで観戦する事になりました。
通路ですので、なるべく壁際に寄って下さいね」
渚の言葉を受け、女子生徒がチームメイトを誘導する。
「なるほど? この子が名古屋の次期主将ってわけか」
「ええ。とてもいい子でいらっしゃいますでしょう? アゲハ、こちらへ」
「はい」
渚が女子生徒の名を呼び、信の前に立たせる。
「私、名古屋魔法高校の2年・黒川アゲハ(くろかわ)と申します。
お話は伺っております。神威信さんと空さんですね?
これからどうぞよろしくお願い致します」
「ああ、よろしく」
「宜しくお願い致します」
アゲハの自己紹介に、信と空がそれぞれ頭を下げる。
「それで、実際のところ。どうなんですの?」
「何がだ?」
渚の問いに、信が問い返す。
「小日向様です。パーティーでは、親しくされていたようですので。
前からお知り合いだったのですか?」
「いや、前に一度話しただけだ。
式守家に用があった時に、たまたま会っただけだよ」
「式守……。ああ、夏季休暇にあったミタカの件ですね?」
うまく納得してくれた渚に、信が頷いた。
「まぁな。だから実際のところ、あいつがどの程度やれる奴なのかは分からん」
「左様ですか」
渚は視線を試合会場へと向けた。
わぁぁぁぁぁぁぁぁっ
どうやらバルーンクラッシュ第1試合が終わったようだ。
転移魔法陣によって試合フィールドに跳ばされていた選手たちが、次々に会場に戻ってくる。
バルーンクラッシュの試合フィールドは、『平原』と『森林』の二か所から選ばれる。
観客はそれについていく事が出来ない為、会場に設置された大画面によって、試合フィールドの様子を観戦する事になる。
フィールドには自立式の小型飛行カメラが無数に飛び回り、様々な場面を的確なタイミングで会場の画面に映し出す。
試合が終わった今。その画面には、『静岡魔法学園○ ×東京都立魔法高校』と表示されていた。
「静岡が勝ったか」
「そのようですね」
信の言葉に、渚が相槌を打つ。
「ここで静岡が負けてしまうと、
バルーンは東京に牛耳られてしまうかと思っておりましたが、
杞憂に終わったようです」
空の言葉に、信が頷いた。
「ああ。ま、どのみち次で雄真にやられていただろうがな」
「ふふ。そうかもしれませんね」
空が笑いながら答える。
渚の品定めするかのような視線には、2人とも気付かなかった。
『これより、バルーンクラッシュ1回戦・第2試合を開始いたします』
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!
静寂に包まれていた会場が一転。
地面を揺るがすかのような歓声が鳴り響く。
ターゲット時の高峰小雪の時と同様、既に観客の歓声に選手たちへの平等さは無い。
完全に。意識はただ1人に向いていた。
『選手入場です』
アナウンスと共に、会場両サイドより両校選手が会場に姿を現した。
『バルーンクラッシュ・Bブロック。第1回戦第2試合。
瑞穂坂学園、神坂春姫・小日向雄真・柊杏璃、対
舞浜学園、大原千絵(おおはらちえ)・加藤浩太(かとうこうた)・森平次(もりへいじ)
の試合を開始します』
各学校チーム・選手名が順番に読み上げられる。
その間に両チームは、中央に歩み寄った。
「こんにちは、よろしくお願いします。
この試合でキングを務めます、大原千恵です」
1人が前に出て自己紹介をする。それに春姫が応じた。
「瑞穂坂学園の神坂春姫です。
この試合のキングは私が務めます。
良い試合にしましょう」
お互いに手を握り合う。大原の目が、雄真を捉えた。
「貴方が小日向雄真君ね? 噂は聞いているわ。
今日は胸を借りるつもりで挑ませてもらうわ。よろしくね?」
雄真にも手を差し出す。しかし、雄真はその手に応えずにこう答えた。
「俺は、貴方たちのチームを上にも下にも見ていない。
今この瞬間、少なくとも試合で決着がつくまでは、俺たちは同格だ。
だから、お互い頑張ろう」
雄真の言葉を聞き、大原だけでなく後ろに控えていた2名も固まった。
しかし、直ぐにその意図を理解したかのように大原が微笑む。
「素敵ね。じゃあ、こう言い換えさせてもらうわ。
正々堂々、お互い悔いの残らない試合をしましょう?」
「ああ。よろしく」
お互いに手を握り合う。
『では、お互いのキングはステージを選択して下さい』
「森林を」
「森林でお願いします」
ほぼ同時に2人のキングが応える。
『両チーム共に森林を選択されました為、
Bブロック第1回戦第2試合・フィールドは森林に決定致しました。
転移魔法陣を作動致します』
ヴゥゥゥゥゥゥン
パシュッ
魔法特有の音と共に、周りの風景が一変する。
「お?」
乾いた音がしたかと思うと、既に雄真は木々の生い茂る密林の中にいた。
先ほどまで耳に届いていた歓声が、嘘のように引いている。矛盾するかのようだが、耳が痛くなるほどの静寂だった。
パシュッ
「春姫か」
「雄真くん。どう? びっくりした?」
「ああ。こりゃ凄いな。今まで会場にいたのが嘘みたいだ」
パシュッ
続いて杏璃が跳ばされてきた。
「よ。杏璃」
「なによ。意外と落ち着いてるじゃない」
「ふ。俺はポーカーフェースだからな」
「あっそ。少なくともパニくってはないようね。安心したわ」
「……なんか、無性に悲しくなってきたな」
「ゆ、雄真くんも杏璃ちゃんも。もう始まるよ?」
春姫の仲裁で、雄真と杏璃が無駄話を止める。
「手筈通りにいくぞ」
「うん」
「ええ。ただ、アンタ。敵の位置把握は大丈夫でしょうね。
森で迷子になったら恥ずかしいわよ?」
「平気だ。任せとけ」
『試合を開始します』
ビ――――――――――ッ!!
開始ブザーが密林に鳴り響いた。
「行くぞ!! クリス!!」
『はい。サーチ開始します』
キィィィィィィィィン
クリスによる、広範囲の探知魔法が発動する。
「なるほどね?」
杏璃がそれを見て頷く。そこから動こうとはしない。
どうやら雄真たちの結果待ちらしい。
『出ました。ここから、9時の方角・約2km先ですね。
まだ3人共そこから動いていません』
「ナイスよ、クリス!
じゃあ、お先に失礼? パエリア!!」
『畏まりました』
杏璃がパエリアに跨り、飛行魔法を発動させた。
「お先には、こっちのセリフだろ?」
ひゅおっ
身体強化を掛けた足で地面を蹴る。
杏璃を追い抜き、生い茂る木々の隙間を駆け抜ける。
「2kmね。随分と広範囲なフィールドだな」
『このスピードならすぐでしょう。“チャージ”されますか?』
「いや、それは奥の手だ。今回は遅延呪文でいく」
『分かりました。何を使うのですか?』
「最初はあくまで牽制だ。いかにこちらのペースに引きずり込むか。
杏璃が来るまでの間、時間を稼げばいいだけ。
大魔法は避ける。規模がでか過ぎて、見失っちまうかもしれないからな」
走りながらクリスと会話する雄真は、こう答えた。
「普通に、魔法球でいくさ。『アダファルス』だ」
一方、こちらは舞浜学園側。予想を遥かに越えた環境に、うまく動けずにいた。
「想像以上に視界が悪いわ。全然先が見えない」
「こりゃ、相手を探すだけでも一苦労だぞ」
そう愚痴りながら、加藤は先ほどから探知魔法を使っている森の方を見た。
「どうだ平次。近くに敵はいそうか?」
その問いに対して、森は首を横に振った。
「少なくとも、現段階では俺の探知魔法には反応が無い。
半径500mで調べている。仮に反応しても、直ぐには攻めては来れない距離だ」
「そうね。まずはゆっくりと様子を見ましょう。
いくら相手が強くたって、私たちを見つけるまではなにもできないはずよ」
「そうだな。んじゃまずは―――」
「反応あり!! 場所は――――!?
何だ、このスピードは!?」
加藤のセリフを掻き消すかのように、いきなり森が叫んだ。
「何だって!? どこだ!?」
「後ろ」
「なっ!?」
加藤の問いに答えたのは、あろうことか雄真だった。
身体強化で既に後ろに回り込んでいた雄真は、手に持つワンドをそのまま振り払う。
ガキィィィィン!!
「うわっ!?」
咄嗟に反応はしたが、加藤の手からワンドが弾き飛ばされる。
(……お?)
まさか一発目の牽制で相手のワンドを手から弾けるとは思っていなかった為、
雄真は驚いたような顔をしたがそれは一瞬だった。直ぐに気持ちを切り替えて、詠唱を始める。
「エル・アムダルト・リ・エルス」
「くそっ!!」
「加藤!! 今助ける!!」
加藤に襲い掛かった雄真に、森がワンドを向ける。
それとほぼ同時に、雄真の掌が森に向いた。
「アダファルス」
ボォンッ!!
「ぐあっ」
ピ―――――――――ッ
『舞浜学園・森平治。アウト』
「平次ぃ――――――!?」
「悪いな。“オープン”アダファルス」
「はっ!?」
ボォンッ!!
ピ―――――――――ッ
『舞浜学園・加藤浩太。アウト』
「嘘!? 詠唱破棄!?」
パァンッ!!!!
「………え?」
大原が驚いて自身の背後を振り返る。
その時には、もうすでにバルーンが破壊された後だった。
ピ―――――――――ッ
『舞浜学園のキング・バルーン破壊を確認。
試合終了です。転移魔法陣を作動します』
ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
足元から光に包まれる。
「はぁっ!?」
転移する瞬間、雄真は茂みから飛び出した杏璃と目が合ったような気がした。
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
気が付けば、会場に戻されていた。
突如耳に戻ってきた歓声に、雄真は眉をしかめた。
顔を上げる。空中に映し出されている映像画面。
その全てに『瑞穂坂学園○ ×舞浜学園』の文字が書かれていた。
(…勝ったか)
そう思った直後、
「雄真ぁぁぁぁ!!!!」
「ん?」
会場に鳴り響く歓声の隙間から、慣れ親しんだ声が雄真の耳に届いた。
声のした方を振り向くと、杏璃がぷりぷり怒りながらこちらに近付いて来ている。
「どーゆーことよ!?」
「な、なにが?」
「作戦よ!! 作戦はどうしたのよ!?」
「いや、作戦通り、背後から奇襲かけたんだけど」
「倒しちゃってるじゃない!!」
「ワリィのかよ!?」
「あ、杏璃ちゃん。雄真くんは別に悪い事をしたわけじゃないんだよ?」
「そ、それは……!? ……分かってるけど」
徐々に尻すぼみになっていく。
どうやら、自分がいかに理不尽な怒りをぶつけていたのかを悟ったらしい。
「完敗よ」
杏璃が押し黙ったのを見計らって、相手チームから声が掛かった。
「完全に手も足も出なかったわ。素晴らしい魔法技能ね」
「負けたよ。探知魔法に引っかかったと思ったら、
既に後ろにいるんだから、びっくりした」
「ちきしょう。詠唱すらできねーとは!!」
順番に握手していく。最後にもう一度、大原が歩み寄ってきた。
「私たちを1回戦で負かせた責任はよろしくね?
必ず優勝してちょうだい」
「ああ。もちろんだ」
雄真はそう答えた。
「はは。やるな、雄真。たった1人で制圧しやがった」
信が愉快そうに笑う。
「素晴らしいですね。使用した魔法は、探知魔法に身体強化と基本魔法球のみ。
あ、あとワンドに状態強化も纏わせていたようですが……」
「ああ。公にしたのはたった4種類。いや、遅延呪文も含めれば5種類か。
いい試合の魅せ方だ。実力の底を、まったく匂わせずにして圧勝した」
信の手放しで賞賛する姿を見て、渚は目を細めた。
「よほど小日向様がお気に召したようですわね?」
「ん? そうだな。奴とは是非、戦いたい」
「だからダブルスへ?」
「はは、その通りだ。相変わらず鋭いな、渚」
信は、会場中央から出口に向かって歩き出した雄真を見据えた。
「これほどまでに、気持ちが高揚するのは久しぶりだ。
“瑞穂坂が隠す最強の秘密兵器”と呼ばれるだけの事はあるな」
励みになります。
個人情報登録等は一切ございませんので、
作品が気に入って頂けましたらお願いします。
優勝校予想アンケートは終了しました。ご協力ありがとうございます。
最終結果につきましては、改めて専用ページを設けたいと思います。
Leica
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