第4話「偽想幻創 〜レプリカ・プリズム〜」
ミルファ・ガーネットから、魔法実技による決闘申込みを受けた。
――――――それから、5分。
俺、小日向雄真とミルファは、2人揃って正座させられ、伊吹に叱られていた。
「まったく! 何を考えておるのだ! そなたら2人は!!」
「・・・・・・はい、すみません」
「・・・・・・申し訳ありません」
「そんなにこの作品を“ひy”にしたいのか!」
「いやそれメタ発言」
理不尽だ。
常軌を逸した決闘を申し込んできたミルファはともかく、何故俺まで一緒に叱られるのか。
そんなに白いパ○ツを握りしめていたことが悪かったのか。
投げつけてきたのは、履いてた本人だぞ。
「まったく、まったく・・・・・・ムー大陸の女性の羞恥心情はどうなっておるのだ!」
「あの、一緒にされるとすごく困りますけど・・・・・・」
「――――(コクコク)」
伊吹の後ろで、アリスが抗議し、エリスが激しく同意して頷いている。
よかった。
どうやら残念な思考の持ち主は、隣で正座しているお嬢様だけらしい。
「――――まぁまぁ、式守さん。その辺にしとこう」
「シュナ・アメジスト・・・・・・だがな!」
「ミルファのそーいう、グレートなボケは昔からだから。気にしてたらキリが無いよ」
「むぅ、まぁ昔馴染みのそなたが言うのなら・・・・・・」
どうやら、ようやく伊吹は怒りの矛先を収めてくれたらしい。
安心しながら、痺れかけた足を摩っていると、今度はシュナがやってきた。
「ミルファ、さすがに今回は僕もどうかと思うよ?」
「う・・・・・・で、ですが・・・・・・」
「うろ覚えの知識で決闘なんか申し込むからだよ。実行する前に、女性が自分の下着を男性に投げつけるっていう、異次元染みた行為に疑問をもってほしい」
「うぅ・・・・・・は、反省していますわ・・・・・・」
「・・・・・・」
なんていうか。
シュナとミルファって、互いに遠慮が無いっていうか、気心知れた感じだなぁ。
さすがは幼馴染。
なんだかんだ言いながら、相当な地位のお嬢様相手に、街のケーキ屋の息子が叱ってる光景は、よくよく考えれば面白い。
多分、2人の間にそういった変な建前なんかが無いんだろう。
「雄真もだよ」
「お、おう!?」
「いくら混乱してるからって、女性の下着を握りしめたままっていうのは、式守さんが怒っても仕方がないと思うよ?」
「いや、あれはノリっていうか・・・・・・まぁ、悪い」
「うん。反省してくれてるならいいよ」
聖人君子のような笑顔を見せるシュナ。
なんていうか、力関係が実に明確に見えた気がした。
―――――昼休みも終わり。
―――――午後からの授業・総合魔法実技の時間が始まった。
「準備はよろしいですの!? 小日向雄真!」
「おー。まぁぼちぼちね」
授業が始まると同時にミルファに連れられ、すでに用意されていたバトルフィールドに連れて来られた。
広さはサッカーグラウンド並にある辺り、実に広大に敷地を利用している。
「シュナー! 審判はお願いしますわよー!!」
「うん、わかってる。2人とも、無茶しないようにー」
「おぅよー―――――ん?」
と、よくよく見てみると、シュナの横にはエリスの姿も見せる。
自分の実技はいいのかなー、とか思っていると、視線に気づいたエリスが笑顔で手を振ってくれた。
なんだか嬉しくなって、思わず手を振りかえしてしまった。
「――――というか、ミルファさん?」
「ミルファで構いませんわ」
「じゃ、俺も雄真でいい。―――――で、話を戻すけど、なんでそもそも決闘?」
それ以前に、ミルファは自己紹介の際に気になることを言っていた。
“自分が、貴方を呼んだのだ”、と。
なら、そもそもこの留学騒ぎの原因は、前方10m先にいる少女、ということになる。
しかし、だ。
そもそも、なんで呼ばれたかがまったくクエスチョンなわけなんですが。
「それは――――――貴方が、私と同じ“始祖の覚醒者”だから」
「は? 始祖・・・・・・?」
「魔法使いでも幻想使いでもない・・・・・・・・・始祖の幻想に到達できる、魂の持ち主」
「???」
「と・に・か・く!」
さっぱり理解できない単語を、押し付けてきたミルファ本人に流された。
まさに傍若無人とはこのこと。
不思議と、嫌な気はこれっぽっちも感じないが。
「私の扱う力の性質上、どうしても一度、同じ魂の持ち主と戦ってみたかったのですわ」
「? だからさっぱり解らないんだけど?」
「それじゃ、行きますわよっ!!」
「いや人の話聞いてよ!? ちょっとはさぁ!?」
まったく。
こんなお嬢様と幼馴染で、尚且つ軽くあしらえるのだから、シュナの付き合いの良さを痛感してしまう。
ともあれ、やるからには負けるつもりはない。
彼女が何をしてこようとも、なんとかしてみせる―――――!!
(――――あれ)
その数分前。
教室で授業を受けていたアリスは、窓から見える光景の中、見覚えのある人物が居た。
(お姉ちゃんに、シュナさん・・・・・・あと、小日向さんとミルファさんだ)
昼休みに言ってた決闘とやらを、どうやら本当にするつもりみたい。
バトルフィールドに、小日向さんとミルファさんが入って行くのが見えた。
(―――!)
と、同じくそれに気づいていたのか、前に座る式守さんも、頻りに窓の外をちらちら見ていた。
なんだろ。
式守さんって、喋り方はこう・・・・・・厳格? なのに、普段の仕草や行動なんかはすごく乙女だ。
それも、小日向さんが関わっている時は特に。
でも実際、本人と対峙してると、そういった素振りを懸命に見せないようにしたりと―――――
(・・・・・・ツンデレさんだ!)
見た事ないからわからないけど。
でも、式守さんが小日向さんに向ける視線が、友人以上のモノだっていうのは、なんとなく解る。
・・・・・・残念なことに、小日向さんからはまるで解らないのだけど。
でもなんていうか、友達になりたいなぁって気持ちになる。
式守さんをちゃんと見てると。ほんとに。
「行きますわよ!」
「・・・・・・!」
開始の合図なんてなく、ミルファのタイミングで勝負の火ぶたが切られた。
元々、授業ついでの練習試合。
彼女の身勝手さを咎めるつもりはない。
とはいえ、それとは別にこちらも練習するつもりだ。
(伊吹に教えてもらった通り、魔力を抑え、必要最低限で発現させるように・・・・・・)
ただでさえ、大気に含まれるマナが多すぎるムー大陸。
普段も俺は、感情が高ぶると魔法が発現するらしいし、実戦でその制御を身に着けないと。
「まずは・・・・・・!!」
「!」
ミルファが構えた右手に魔力を集め、高々と掲げる。
まずは様子見だ。
この大陸の出身者である以上、彼女もただの魔法使いではなく、幻想使いであるはず。
なら、初めは守勢に徹し、彼女固有の“幻想”を見極めなければ。
「魔呪・風邪の風!!」
「! 風!?」
本来なら視認することも出来ない風。
だが、魔力を纏った“紫色の風”が、まるで波のようにミルファから放たれた。
その、咄嗟の驚きが防御障壁を展開することを忘れさせ、結果、両腕で顔を守ることしか出来なかった。
「・・・・・・?」
しかし解せない。
来るであると予想した、衝撃等はまるでなく、ただ風が通り抜けただけ。
だが、その直後―――――違和感が、身体を襲った。
「・・・・・・!?」
寒気がする。
悪寒と言ってもいい。
下半身から来る寒気に、徐々に熱っぽくなる顔。加えて喉がなんだか痛くなってきた。
「まさか、風邪・・・・・・!?」
「その通りですわ! この風は、通り抜けたモノに文字通り、風邪をひかせるものでしてよ!」
風ではなく、風邪。
暴力的に、他者に病気を強制させる、一種の呪い染みた魔法。
つまり、ミルファの“幻想”とは――――――
「呪法使い、なのか・・・・・・っ!」
――――――呪法使い。
文字通り、“呪い”を扱える者。
ムー大陸ではどうか知らないが、日本では一応魔法使いの一種とされている。
しかし、呪いと一括りにしてもその中身は多種多様に分かれており、ここで語るには多すぎる。
ただ、少なくとも。
風に風邪をのせて、強制的に病気にさせるなんてこと、聞いた話がない。
「随分と、お嬢様、らしくない魔法・・・・・・だな」
やばい。
段々頭がぼーっとしてきた。
風邪の初期症状はとっくに過ぎて、すでにピークに差し掛かっている。
「ふふふ、違いますわよ、雄真」
「・・・・・・?」
「私の実力はこんなものじゃありませんわ! いいですこと?」
言って、ミルファは再び右手を構え、
「魔呪・風邪の風!」
自分に向かって、風邪をひく風を放っていた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・ゴホッ、ゴホッ!」
俺だけでなく、エリス、シュナも冷めた目でミルファを見ている。
何を考えているんだろう、あのお嬢。
見た目は見め麗しい深窓の令嬢なのに、どうしてこんなに残念なんだろーか。
神サマは実にバランスよく、彼女に二物を与えてはくれなかった模様。
「な、なんですの、その冷めた目はっ!・・・・・・ゴホッ」
「いや、なんていうか・・・・・・なんなんだろうなぁ。・・・・・・ケホ」
「こ、ここからですわ!」
言って、今度は左手を掲げ、魔力を集中。
練られた幻想を、再び自分自身へ向けて放った。
「反転魔呪・邪魔な風!」
緑色の風がミルファを通り抜けたかと思うと、先程まで熱っぽかったミルファの顔が、すっかり元通りになっている。
顔色もよく、咳も止まっており、まさに体調良好といった感じ。
つまり――――――
「風邪を治した・・・・・・?」
「これが私が編み出した呪法、反転魔呪ですわ!」
呪詛返しではなく、呪いの性質の反転。
つまり、呪いの裏返し、というわけだ。
病気を強制させ、治療も強制させる、この強引さ。
ミルファが持つに相応しい“幻想”だとすごく思う。実に。
「たまに私、お医者様の所でお手伝いさせてもらってますのよ」
「なるほど・・・・・・そりゃー確かに、引く手数多だわな」
さて、ならば。
取り急ぎ、診察してもらいたい患者がここにいるわけなんですが。
「ところで、ミルファさん?」
「なんですの?」
「・・・・・・後で保険証出すから、俺の風邪、治してくれない?」
「もちろん、いいですわよ。――――この決闘の後で、ですが」
「―――ちっ」
さすがにそこはノリで誤魔化せないか。
なら仕方ない。
早々にこの勝負を済ませて、さっさと治してもらうしかない。
「甘いですわ! このまま一気にたたみ掛けますわ!」
「!」
「魔呪・痛風の風!」
「げ!?」
ミルファが右手を突き出した瞬間、ノータイムで左手を突出す。
「エル・ラティル・アムレスト!!」
今度こそ展開した、7枚の防御障壁が、呪いの風を完全に防風してくれた。
というか、なんて病気をさせるつもりなのか!
単純な風邪なまだしも、痛風って生活習慣病だぞ!?
聞いた話じゃ、歩くことさえ激痛って話だし。
「あら、随分と綺麗に防ぎますのね」
「ミルファ・・・・・・!」
悪いが、加減する余裕はない。
風邪の症状は刻一刻と悪くなる一方だし、痛風クラスの病気なんて受けた日にゃ、堪ったものじゃない。
今までと同様、いつものように右手を構え、
「エル・アダファルス!!」
魔力を凝縮した光弾を放った――――――ハズだった。
「あれ?」
「きゃーっっ!!??」
直径5mはあろう巨大な光の塊は、凄まじい勢いと速度で、情け容赦なくミルファへ発射。
それを愉快な悲鳴と共に、フィールド端へ全力のハリウッドダイブで逃げるミルファ。
先程までミルファがいた場所は、地面が黒く焦げ、なんかプスプス言ってます。
早い話が、フィールドを大きく抉り、焦土のよーにフィールドの結界まで吹き飛ばしてしまった。
「ど、どういうつもりですの!? 私を殺すつもりですの!?」
「あ、ごめん。これでも気持ち、手抜いたんだけど」
あくまで、気持ち。
実質、本来の9割5分くらいの力です。
「て、手を抜いてこれですの・・・・・・?」
「あちゃー」
「あちゃー、て! 当たってたら丸コゲでしたわよ!?」
「またまた大げさな」
「“KESHIZUMI☆”確定ですわよ!! 避けれたのは奇跡みたいなものですわ!!」
「うん。見事なダイナミックジャンプだった」
両手両足をピン! と伸ばして、“びったーん”と顔面から地面に着地する、ミルファ曰く奇跡の避け方。
ただし、美しさのカケラもありませんが。
まさに、生きる為の行動。
恥も外見も投げ捨てた、渾身の回避跳躍である。
「く・・・・・・! どうやら遊んでる暇はないようですわね・・・・・・!!」
「む・・・・・・ケホ」
一方、雄真の魔法を初めて目にしたシュナは、そのあまりの威力に唖然としていた。
「す、凄いな・・・・・・雄真って、あんな魔法をアッサリ放てるのか・・・・・・」
「―――――」
対して、すでに何度もそのトンデモっぷりを見てきたエリスは、平然と決闘を眺めていた。
「・・・・・・」
さっき、小日向さんはまた咳をした。これで2度目。
顔色もなんだかどんどん悪くなってきているし、心配になってきた。
簡単な治癒魔法なら私も使えるし、万が一の時は使えるように備えておかないと。
「・・・・・・ねえ、エリス」
「?」
シュナの呼びかけに、顔を向けて首を傾げる。
昔からの付き合いからか、シュナはそれだけで理解し、続きを話した。
「僕はね、ミルファが雄真をこの大陸に呼んだ理由を知ってるんだ」
「――――」
「でももし、雄真がミルファの睨んだ通りの力を持っているとしたら・・・・・・」
――――したら?
と、視線だけで続きを促す。
それに気づいたどうかは知らないけど、シュナは1歩前に出て、
「ちょっと、危ないかもしれない。備えた方がいいかもね」
「――――」
言って、彼は自身の2対のマジックワンドを取り出した。
私は解らないけど、彼はミルファの表情から察するに、次に何をするのか気づいたのだろう。
微かに頷き、彼より2歩下がり、指先に魔力を集中しておく。
―――――さて、これで備えは充分。
―――――後は、今からあの2人は何をするのか、ということなんだけど。
「・・・・・・?」
気づいたのは、些細な違和感。
ミルファの周囲が、微かに揺らめいて見える。
「ミルファ・・・・・・?」
「――――」
呼びかけるも、返答は無い。
それは、答えることも出来ない程に、大掛かりな構成と詠唱を唱えているのだと。
今更ながらに気付き、慌てて防御魔法の展開に備える。
それに対し、ミルファは不敵な笑みを浮かべながら、まるで何かに憑り着かれたかのように――――――
―――― 存在外第5幻想 ――――
―――― 偽想幻創 ――――
―――――そんな、理解できない言葉を紡いでいた。
「 」
直後、ミルファは右手を中空に構え、その掌をこちらへと狙い定めた。
それは、まるで鏡のようだった。
その構え、呼吸、魔力の規模。
そのどれもが、先程の雄真と同一。生き写しのような、まるで映像を焼き増し再生しているかのようで。
―――――真実、その真名まで同一だった。
「エル・アダファルス!!」
放たれた常識外れの密度を誇る光の塊は、雄真の真横を掠めるように、フィールドを灰塵と化す。
動きだけでなく、放った魔法までも完全に同一。
本来扱えるはずのない他流派、他種の幻想全てを同一のものとして“偽装”する“幻想”。
それが、ミルファが持つ“偽想幻創”と呼ばれる切り札だった。
―――――けれど、雄真はそんなことを微塵も気にしていなかった。
驚いていないわけじゃない。
けど、それ以上のモノが思考全てを支配してるだけだ。
彼女が言った、“存在外幻想”という言葉。
それが、思考を完全に支配し、精神を浸食し、雄真という存在のスイッチを押してしまった。
それは、この世界の雄真では知りえない事実。
雄真自身、13ある存在外幻想を魂に宿す、“星の夢”の保有者に他ならない。
だがその幻想を覚醒させるのは、ちゃんとした条件があり、本来、目覚めることの方が少ない。
だが、しかし。
今だ目覚めていない保有者が、すでに目覚めている保有者に触れた時、根源が同じである以上、自覚、条件がなくても覚醒に起因される。
今まで目覚めていない、スイッチがOFFだった雄真。
それが、ミルファの狙い通り、スイッチがONになる。
「―――――!!」
声にならない叫びが漏れる。
雄真自身が理解できない、自覚できない領域へどんどん沈んでいく。
その変化を誰よりも理解して見ていたのは、同じく“覚醒者”であるミルファだけだった。
「やっぱり・・・・・・!! 思った通りですわ・・・・・・!!」
喜びの声を漏らしつつも、その表情は苦悶に歪む。
彼、雄真から解放される存在外幻想の矛先は、他ならぬ彼女自身なのだから。
「――――」
それにしても、彼は凄い。
一度、存在外幻想を解放しただけで、覚醒してしまうなんて。
加えて、彼から感じる幻想は一つだけではない―――――!!
「世界を同化させる幻想に、世界に同化する幻想―――――!!」
吹き荒れる砂塵はグランドを覆い、他の全てを排除していく。
その中心核こそ、雄真とミルファの両名に他ならない。
このあまりに現実感を吹き飛ばした光景を、エリスとシュナは驚愕の目で見ていた。
「な、なんなんだ、これ・・・・・・!?」
「――――っ!」
吹き飛ばされそうな暴風は、その全てが魔力そのもの。
それは、雄真とミルファが半ば暴走しているともとれる。
人智を超えた幻想同士の衝突。
それは、魔法使いでしかない人たちには止めようもないこと。
でも、それでも。
何もしないで逃げるなんてこと、エリスとシュナには到底無理な話だった。
「エリス!」
「!!」
シュナの呼びかけに頷き、エリスの指先が輝いていく。
その数、実に10本。
両手全ての指から魔法を発現させる、“神秘の指”全てを装填していく。
―――――同じく、シュナ。
脳裏にイメージするは、砂時計。
それを、自ら相反するイメージの中で傾け、自己認識による時の流れを狂わしていく。
審判役であった2人が、雄真とミルファの激突を決死の思いで止めようとした。
―――――――その、瞬間
「―――、!」
最初に気付いたのは雄真。
それに釣られる形で、ミルファも何事かと真上を見上げる。――――と、
(・・・・・・?)
銀髪の幼女がいた。
重ねて言うと、銀髪の幼女が上空で滞空していた。
よくよく見てみれば、その表情は怒っているようにも見えるのだけど、はて?
なんて、首を傾げようとした瞬間。
「ラ・ディーエッッ!!!!!」
持っていたパラソルを振りおろし、その突っ先から殺意全開の紅い雨を放っていた。
(ひ―――!?)
目視、1秒。
直撃まであと0秒という一瞬の刹那、ミルファの視線は雄真へ向けられる。
そこには、先程までの空気はどこへやら。
状況を悟ったのか、雄真は清々しいほどに晴れやかな笑顔をこちらに向けていた。
(諦めてますのーーっっ!?)
―――――直後、直撃。
伊吹の魔法も例に漏れず、このムー大陸特有の魔力濃度の濃さで、絶大にパワーアップ。
“ラ・ディーエ”の一つ一つが、“ル・サージュ”クラスの威力を持ち合わす凶悪っぷりである。
そのくせ、きっちり制御している辺り、雄真とは違い伊吹だからこそだが。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「何をしておるのだ、そなたらは!!」
エリスとシュナの絶句を意にも介さず、上空から怒声を叫ぶ伊吹。
間違いなく、まだ授業中なのに、どうやって教室から抜け出して来たのか。
そしてグランドを焦土のよーに灰塵としておきながら、叫ぶセリフがアレである。
常識外れにも程がある。
「こんな場所で常識外れの魔法をぶつけ合うなど・・・・・・非常識にも程がある!!」
そんな非常識な2人と“一撃”で何もかも吹き飛ばす貴女の方が非常識です。
と、思ったのは、エリスとシュナだけではないはず。
「まったく! どういうつもりなのだ! この大陸の魔法使いは!!」
などと、酷くご立腹な様子の伊吹。
パラソル片手に、ぷかぷかと教室棟まで戻って行ってしまった。
「・・・・・・なんていうか」
「――――」
「・・・・・・ぶっ飛んでるなぁ。雄真も、式守さんも」
「―――(こくこく)」
シュナの意見に激しく同意してしまうエリス。
グランドに目をやれば、“ラ・ディーエ”の直撃(正しくはその衝撃)で完全にのびているミルファと、直撃こそしてないけれど、風邪の症状が悪化してのびてしまった雄真。
なんていうか、まぁ。
見事なまでに格好つかない2人に見えた。
小日向雄真 VS ミルファ・ガーネット
決闘結果
勝者:(乱入)式守伊吹(圧勝)
「・・・・・・なにやってんだろうね、まったく・・・・・・」
午後、学園の掲示板に張られた決闘結果の報告記事。
それを改めて見て、シュナは思わずこう言わずにはいられなかったとか。